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素人のエロ投稿やエロ体験談が大好きです。ジャンルごとにまとめてみました。他ブログからのお引越しですが、手動のため、ある程度まとめての更新です。。。
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 新入社員の頃は、バレンタインデーに社内のどこら辺くらいまでのつき合いの男性にどれくらいの予算でチョコを配ればいいのか、頭を悩ませたものだった。
 先輩に相談してみたら、あっさりと
「うちではこんな感じね。隣はこんな感じ。総務だけはちょっと違ってね……」
 と、教えてくれたっけ。
 社内の義理チョコなんて、貰う方も淡々としたものだ。
「ありがとう、うれしいよ」
 なんてちょっと笑って、あとは鞄や机にポイ。そしてお返しには、ハンカチか、どっかのお菓子ブランドの缶入りキャンディーかクッキーだ。
 私のような独身OLには一人くらい奮発したお返しをくれても良さそうなのに、そういう人もいなかった。
 会社に入って3回目のバレンタインデーに、私はふと、チョコにそれぞれ手書きのメッセージカードを添えてみたらどうかなと思いついた。
『この間の飲み会で歌っていたアニソン、すっごいウケました!』
『最近残業続きでお疲れでしょう。甘いものは疲れにいいそうですよ』
 そんな言葉を小さなカードに書いて、チョコレートと一緒に渡すのだ。
 この思いつきは、私をウキウキとさせた。可愛らしいカードを購入し、蛍光ペンで文字を並べた。ひとりひとりの顔を思い浮かべながら、なにを書こうと考えるのは結構楽しかった。
 バレンタインデー当日。
 他の女子社員は事務的にチョコレートの包みを出して配っていたが、私はそういうわけにはいかなかった。なんせ、ひとりひとり、別のメッセージカードを添えているのだ。誰に書いたカードを確認しなければならなかったため、個別に配らなければならなかった。
 仕事中に渡したり、廊下に出ているときに渡したり。計算外で面倒だったが、チョコレートの小さな包みと一緒に私が差し出したメッセージカードを見て、
「ありがとう」
 と笑顔を見せてくれる人が多かったのは嬉しかった。課長なんかは、
「こういう一言があると嬉しいね」
 なんて笑って、他の男性社員に、君のにはなんて書いてあった? なんて見て回ったりしていた。
 チョコと一緒に渡したカードを見ても、ありがとう、と事務的に言って、すぐに背を向けて素っ気なく立ち去ってしまう人も何人かはいたけど、おおむね、好評だったと言って良いだろう。
 おかしなことが起こったのは、数日後のことだった。出社して社内メールをチェックした私の目に、見覚えのない差出人からのメールが飛び込んできたのだ。
 差出人の名前欄は『冴子の彼』メールタイトルは『僕も冴子が大好きだよ』
「なにこれ」
 間違いかとも思ったが『冴子』と、私の名が入っている。明らかに私宛に送られたものだ。私は人目を気にしながら、恐る恐るメールを開いた。
『愛しの冴子へ。
君の気持ち、とても嬉しかったよ。僕も前から、冴子のことがちょっと気になっていたんだ。良かったら今晩逢いませんか? 思い出の場所で待っています。』
 くらくらとした。なんなんだこのメールの文面は。
 私には全く心当たりがなかった。メールアドレスを確認したが、フリーアドレスで、誰だか分からない。
 やっぱり間違いメールだったのだろうと、私はそのままパソコンで社員名簿を検索した。冴子という名の女子社員は、私しかいなかった。
 私はそのメールを削除した。その日はそれだけ。他に変わったことはなにもなかった。
 次の日だった。
 出社し、社内メールをチェックした私は思わず声をあげそうになった。
 私宛にメールが一〇〇以上届いていた。そしてその差出人欄を『冴子の彼』が埋め尽くしていたのだ。
「なによ、これ」
 並んだタイトルは、読むだけで頭が痛くなりそうなものばかりだった。
『連絡を待っています』
『どうしたのかな?』
『連絡下さい』
『なにかトラブルですか? 心配です』
『大丈夫ですか? 心配です』等々。
 社内メールを携帯に転送していなくて良かった。もし、他の社員のように転送設定を付けていたら、私は昨夜、気がおかしくなっていたかもしれない。
 メールは、最初の何通かだけ読んで、すべて削除した。この誰かは『冴子』を『思い出の場所』で待ち続けたらしい。
 その日はさんざんだった。
 一時間おきに『冴子の彼』から社内メールが届いた。中身は
『どうして無視するんですか? 恥ずかしがっているのかな』
 なんてどうしようもないことばかりだった。たちの悪いイタズラだろう。実害はないし、私は気にしないことにした。
 ところが翌日から、メールの文面に変化が表れた。
 私がトイレに立ち、戻ってくると件のメールが届いている。見ると、
『トイレ、十二分もかかっていますよ。もしかして女の子の日なのかな? だから僕に会いにこなかったのかな?』
 と書かれている。
 昼休みが終わって席に着くと、
『今日は、駅前のMでしたね。ファストフードは体に良くないですよ!』
 と言う文面のメールが届く、といった具合だ。さすがに放っておけないと判断した私は、仲の良い先輩に時間を作ってもらい、相談することにした。
 ***
 会社からかなり離れたレストランに席を取った私は、それでも一応、周囲を確認した。『冴子の彼』が社内の人間であることはほぼ間違いがなかった。しかも、同じ部署の人間だろう。レストランには先輩の他に知った顔は見あたらなかった。
 先輩は私の話を聞くと、困ったような表情を見せていた。
「あんまり言いたくないんだけど」
 先輩はパスタに刺していたフォークを置き、水に口を付けてから言った。
「バレンタインデーに冴子、チョコと一緒にカード送ったでしょう? あれ女子社員の間でちょっと問題になったのよ」
 初耳だった。
「ひとりだけ違うことをする人がいると、どうしても他の女子社員にも同じようなことを期待する人もいるでしょう? まあ、他愛もないことだけどね。そういうのに、過剰反応する人もいるから……」
 何人かの同僚の顔が頭に浮かんだ。そう言えば佳美が
『ただチョコを渡しただけの私が手抜きしてるみたいじゃない』
 なんて言っていたのを思い出した。冗談で言っていると思っていたけど。
「え? じゃあまさか誰かが私に嫌がらせしてるってことですか?」
 血の気がひいた。まさかそんなことで。
「違う違う、そうは言ってないわよ」
 先輩は慌てたように口に入れたばかりのパスタを喉の奥に押し込み、真っ青になっている私に笑いかけた。
「そうじゃないけどね。ほら、勘違いする人っているから。もしかしてあなたがあげたカードを本気の告白と受け取った人もいるかもしれないでしょう?」
「まさか! みんな、洒落だって分かってますよ。ほら、課長がみんなにどんなカード貰ったんだって聞いて回ったとき、先輩もいたでしょう」
「あのとき、全員がいたわけではないでしょ。中には、思いこみの激しい人もいるってことよ」
 その瞬間、私の背筋を冷たいものが駆け抜けた。
 まさか……。カードの一枚に『一緒に行った品川のレストラン、とってもステキでしたね。またあのレストラン行きたいなぁ』と書いたのを思い出していた。
 あれは、同僚数人で行ったのだ。ふたりきりではない。また行きたいと書いたのは、また、みんなで行きたい、と言うつもりだった。だがもしあれが、デートの誘いに受け取られていたら――。
 メールの中にあった『思い出の場所』という言葉がよみがえった。あのカードを渡したあいつは、あの時――課長がみんなにカードの内容を聞いて回ったとき、いただろうか? あいつには廊下で手渡したのではなかったか。そしてあいつは、素っ気なく立ち去っていっただけではなかったか――?
  ***
 無視し続けていた『冴子の彼』からメールがこなくなって暫くした頃だ。
 二日ほど風邪で会社を休んでいたため、その日私はひとりで残業をせざるえなかった。
 ノートパソコンに向かって延々と数字を打ち込み続けて、ふと気づくと終電近くなっていた。
 早く帰らなければ。会社に泊まり込みはゴメンだわ――。私は慌てて帰り支度を始めた。そのときだ。人の気配を、背後に感じ、私は振り向いた。
「ひっ」
 思わず声が出た。そこに立っていたのは、同僚の山崎だった。山崎はあまり社交的ではなく、社内で親しくしている人もいない、目立たない独身の男だ。仕事も熱心ではなく、最低限の給料さえもらえれば出世しなくてもいいと思っているような節がある。体が大きく、体格はいいのだが、スポーツはてんでダメだという話だった。
 そしてこの山崎は――。
「冴子、どうして僕のメールを無視していたの?」
 にやけた口元からのくぐもった声がふたりきりのオフィスに響いた。
 やっぱり『冴子の彼』はこいつだったのか。普段は私を名字にさん付けで呼ぶ山崎から呼び捨てにされ私はぞっとした。
「あなたのメールだったの。あれ、なんの冗談? 私、怖かったのよ」
 私は出来るだけ平静を装い、強い口調で言い放った。
「冗談? 誘ったのは冴子じゃないか」
 山崎は、私との距離を徐々に詰めていた。私は後ずさり、デスクにぶつかってよろけた。
「おっと」
 山崎の手が、私の肘をつかんだ。その瞬間、私は怖くなり
「離して!」
 と大声で叫び、思い切り山崎の手を振りはらった。
 私の剣幕に山崎は最初、ぽかんとしていた。なにがなんだか分からないという表情だった。だが、その表情が次第に曇り、やがて瞳に怒りが宿っていった。
「僕をからかったんですね? 畜生。僕をからかって、僕がひとりで品川に出かけたりあなたを待ったりしていたのを、どこかであざ笑っていたんだ」
「違う、そんなことはしていないわ!」
「じゃあ、どうしてあんな……」
「あのメッセージカードは、みんなに送ったのよ。あなただけじゃない。それにあれは……」
「やっぱり僕のこと、からかったんじゃないですか!」
 山崎の肩は震えていた。頬が赤く染まり、瞳の怒りの色は、ますます大きくなっていく。
「誤解させたなら、あやまるわ。だから……アアッ!」
 山崎が私の身体を強く掴んだ。私はデスクに乗り上げる格好で固定される。山崎の顔が、私の目の前に突き出された。
「いやだ。許すものか」
「いやぁ!」 
 男の力は思いの外強い。山崎は私をデスクに座らせたまま、私のストッキングを破り取り、両脚を左右に大きく開いた。
「やめて、離して!」
 必死に脚で蹴りあげようとしたが、ぐいと押さえつけられてそれも出来ない。私のスカートをたくし上げ、ショーツを注視している山崎の背中にデスクの上にあった辞書を投げつけたり叩いたりしたが、彼は微動だにしない。
「あ……あああああっっ!」
 山崎の生暖かい舌が、私の太腿を這い回った。山崎は抵抗のかなわない私をあざ笑うかのように、時折私を眺めては、太腿を舐め回す。
「やめて、やめてちょうだい!」
 やがて舌は内股から、開かされた脚の真ん中へと伸びていった。
「イやぁッ!」
 ショーツの上から秘所をねぶられ、恥ずかしさに頬を涙が伝った。私はみんなに喜んで貰おうと思って、カードを付けただけなのに。どうしてこんな目に遭わなければいけないの――?
「冴子のここ、すごくいい匂いだし、おいしいよ。ああ、僕の冴子……」
 恥ずかしさと絶望感で抵抗する気力を失った私のショーツを山崎がぐいと脇へずらした。
 山崎の顔が私の目の前に現れた。にやけた、だらしのない顔。
「好きだよ、冴子……。本当は僕のが欲しかったんだろう? 今、挿れてあげるからね……」
 山崎の厚い唇が私のルージュをぬぐい、生温かな舌が私の咥内をねちゃねちゃと這う。
「う、ううううっっ……ッッッ!」
 下半身に突き抜けるような熱い痛みを感じた。 
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「やめてよ! こんなところで……」
「おかしなこと言ってるからだ」
 敬一は私を背中から抱き、スカートの中に手を入れた。
 調理台の上に積み重ねられたアルミ鍋が動き、静まりかえった教室に金属質の音を響かせる。
「だって、本当のことでしょう? 他の人達とも、こういうことしているんでしょう?」
「いい加減にしなよ」
「エッチでごまかそうなんていやよ」
 敬一の手が下着の中に滑り込む。敬一の指が絶妙な動きで、私の秘裂をまさぐり、ねちゃねちゃと音を立てながら奥まったすぼみに沈んでゆく。
「あ……」
「声……あんまり出さない方がいいと思うよ。警備の人が来ちゃうよ?」
 耳元で囁かれ、私は震えた。
 敬一の指が私の内壁を弄ぶ。首筋に、歯が立つ。
「あ……ンフ、ふう、ンンンっっ」
 脚が震えて、立っていられない。巧みな指使いで弄くられ続ける私のあそこから、まるでお漏らしのように愛液が流れ出て内股を濡らす。
「すごい。こんなところでされて、興奮しちゃってるんだ?」
 敬一がそんな生意気なことを言う。
「うるさいわね。ごまかそうったって」
「じゃあ、やめちゃっていいの?」
 やめて欲しくない。気持ち良くて良くて。今やめられたら、おかしくなってしまう。
 敬一はテクニシャンだ。私が今まで寝たどの男より、年下の敬一は私を気持ち良くさせてくれる。
「挿れてあげようか? 欲しいんでしょう?」
 敬一が、意地悪く私の耳元で囁く。ああ、欲しい。欲しい欲しい。敬一のペニスを突っ込んでもらいたい。ぐちゃぐちゃといやらしい音をいっぱい立てながら、私をかきまわして欲しい。
「あ…ああ……」
 ここで欲しいと言えば、敬一はきっと私を満足させてくれるだろう。こんなところで? ここは、敬一がアシスタントとして働いているカルチャーセンターの一角。料理教室の、教室だ。
深夜の今は誰もいない。真っ暗なその部屋には、月明かりが差しているだけだ。
「欲しいんでしょ?」
 欲しくてたまらない。
 敬一が私の中から指を引き抜き、にやりと笑ってぺろりと舐めた。
「あ……ああ」
 月明かりに照らされた敬一は、本当に美少年だ。私を蔑むようなその瞳にもぞくぞくする。空っぽになった私のあそこが疼いてたまらない。
「欲しいなら、ちゃんと欲しいって言わなくちゃ」
 悪魔みたいな男だ。
 敬一は調理台にお尻を軽く載せ、ズボンの前を開けた。形の綺麗なペニスが覗く。すでに固く張り切っている。あれがねじ込まれたら、どんなにか気持ちがよいだろう。
「ああ……私は……」
 ここであれを挿れられたら、この話はうやむやになってしまうだろう。そしてまた、嫉妬を続ける苦しい日々が私を襲う。
 一時の快楽をとるべきなのか、それとも――。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 敬一と私が出会ったのは、書店だった。食材の本に手を伸ばした私の手と重なった敬一の手。あの時のちょっと驚いたような……恥ずかしそうに目を伏せた敬一の綺麗な顔を、私は忘れられない。
「一冊しかないですね。どうぞ。僕は別の書店で購入しますから」
 敬一は本当に綺麗な男の子だ。男の子、と言うと敬一は怒るかもしれない。彼は幼い顔立ちをしていたが、二十歳だ。私と、三つしか変わらない。 
 書店で何度か顔を合わせることが多くなり、私たちは会釈を交わす間柄になった。そこからつきあい始めるまで、本当にあっと言う間だったと思う。
 彼は、料理教室のアシスタントアルバイトをしていた。
「若い女性ばかりなんでしょう? 中には敬一にモーションかけてくる人もいるんじゃないの?」
 私の問いに、敬一は微笑み、答えた。
「だったら、菜穂子さんも僕が手伝っている料理教室に来たらどうかな。ちょうど、春のコースが始まるよ。僕、料理が上手な女性好きだし。僕の監視も出来るから一石二鳥じゃない?」
 仕事をしている敬一に興味もあった。敬一は平日夜のクラスの手伝いをしている。私は、その日のうちに申込書を手に入れ、教室に出したのだった。

 教室での敬一は、私と付き合っている素の敬一、そのままだった。少しも飾らず、優しく生徒達に接していた。
 そして私がにらんだとおり、会社帰りのOLの多いその教室で、敬一は生徒達の人気を独り占めにしていた。
 講師をしている男性も、なかなか渋い、いい男だった。落ち着いてみるとそのカルチャースクールは、講師やそのアシスタントがなかなかの美男美女揃いだ。顔で採用しているんじゃないかという噂があると聞いた。
 そんな馬鹿なと思っていたが、ドアの開閉時などに防音室から漏れ聞こえる歌謡クラスの色男だという人気男性講師の音痴っぷりを耳にすると、本当にそうかもしれないなんて、思ってしまう。
 実際、料理教室のアシスタントをしている敬一だって、料理をしたことがあるのか、あやしいものだった。
「あーん、私、出来ない~」
 なんて包丁を握ったまま甘えた声をあげる生徒の手に、そっと自分の手を添える敬一を見ていると、もやもやとした感情が胸に渦巻いた。
 敬一が生徒にとびきりの笑顔を見せたりしていると、殴られるように胸が痛んだ。
 けれども、これだけ人気のある敬一が、教室の外へ出れば私ひとりのものなんだと思うと、その感情はいつしか優越感に変わっていった。
「敬一は、私と付き合っているの」
 そう言いふらしたくてたまらなかったが、敬一に
「職場だから。一応そういうことは言わないで。内緒にしておいて欲しいんだ。色々面倒だから」
 と言われていた。敬一の言うことはもっともだ。公私の区別をつけないのはやっぱり良くない。
 そんな時だ。あの話を聞いたのは。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんのこと? 菜穂子さん」
「とぼけないで」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 敬一と一緒に帰ろうと、講師室を覗いたあの時。
 経営者っぽい大柄な女性が、どこかの教室のアルバイトアシスタントに、封筒を渡していた。
 そのアルバイトは確か、パソコン教室のアシスタントだ。背が高く、敬一とは対照的に、大人っぽいいい男。
『コレ、追加の報酬。始めたばかりなのにもう3人も生徒さんを連れてきてくれるなんて、やるわね』 
『たいしたことないっすよ……あの』
『なあに?』
『敬一は……今月何人ですか?』
『あら、ライバルの動向が気になるの? 彼はまだ2人よ』
『いや、あいつ、付き合って騙して生徒連れてくるようなところがありますからね、ちょっと心配で……』
『あら? あなたはちがうの?』
『え? いや俺は、普通に勧誘してますよ。……って、まさか他の人は敬一方式なんですか?』
 私はその場を動くことが出来なかった。
 噂で聞いたことはあった。でもそれは、講師やアシスタントが美男美女揃いだから、邪推から出た噂だと思いこんでいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「敬一、他の女性ともつきあって……そうしてこの教室の生徒増やしているんでしょう? それで、追加のギャラを貰っているんでしょ? 私もそうなのね? 教室に勧誘することが目的で、私にも近づいたのね!」
 敬一の顔に動揺の表情が走ったのを、私は見逃さなかった。
「そう……そうなのね? じゃあ、あなたは他にも教室の生徒さんと……」
 やたら甘えた声を張り上げるOL、時折意味ありげに敬一を見て笑う女子大生。教室の生徒達が頭に浮かんだ。彼女たちはみんな、私と同じように――。
「ひどいわ。……みんなに、ばらしてやる……」
「なに言ってるんだよ」
「だって……ちょっとなにするのよ、こんなところで」
 敬一は私を抱きしめ、唇を押しつけた。すべすべの手が、私のブラウスの中に潜り込み、乳房をまさぐりながら、身体を私の背後に移してゆく。
「やめてよ! こんなところで……」
「おかしなこと言ってるからだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ん……んあぁ、んあああ」
 私の口の中で敬一のペニスがますます固く、大きくなっていく。月明かりに照らされた敬一の細い身体が、圧倒的な存在感で私に迫る。
 くやしい。
 敬一はこうやって私を抱いて……誰もいない深夜の教室で――敬一がそのルックスとセックスで連れてきた生徒だらけのこの教室で、私を抱いてごまかそうとしている。
 敬一を振り払い、逃げ出せばいい。そんなことは分かっていた。けれども私は、それが出来なかった。
 敬一が欲しかった。たまらなく欲しかった。
「ん、んあああ」
 私の唾液でまみれた敬一のペニスが愛おしい。
「菜穂子さん、これ好きなんでしょう?もうくだらないことは言わないでね」
 敬一はゆっくり、冷たいタイル張りの床に、私の背中を押し当てる。ひんやりとして、ぞくぞくする。けれども下半身は驚くほど熱くて……。
「敬一……」
「いくよ」
 敬一の手が、私の下着にかかる。私は無抵抗に、腰をすこし浮かして上げる。下着が脱げやすいように。
 けれども敬一は私の下着を脱がさず、股の部分をぐいと引っ張り、ずらしただけだった。
「誰か来るとヤバイからさ」
 そんな風に言う敬一が憎たらしくてたまらなかった。
「ア、アハッ!」
「声、もっと落として」
 敬一の唇が私の唇を多い、声を隠す。唾液を絡ませた肉の棒が、私の淫肉びらを左右に分け、奥に隠れたすぼみを貫いてゆく。
「ン、あはっン、ン、ンンンっ!」
 ズッ、ズボボボボ……。
 濡れそぼった私の下腹部は、さしたる抵抗もなく敬一のイチモツを呑み込んでゆく。奥へ、奥へ。
「んんんんっ!」
 最初は優しくゆっくりと。じれったくなるタイミングで、早く激しく。
 敬一は私の様子を的確に捉えながら、ピストンを繰り返す。
 こんな……グロテスクな肉塊を出し入れされるだけなのに、どうして私はこんなにも感じ、満たされてしまうのだろう。
 じゅぷじゅぷと粘着質な音と、私や敬一の息づかい、それに肉のぶつかるはじけるような音が静かな教室に響く。
 強い刺激と快感で、身体がかっかと熱い。じっとりとにじんだ汗で身体が床を滑る。
 気持ち良くて、頭が真っ白になっていく。敬一のこれを貰えるんだったら、もう何もいらない――そんな心持ちになってゆく。
「菜穂子さん、イイ。気持ちいいよ。菜穂子さんは最高だ。菜穂子さんだけ、菜穂子さんだけだよ……」
 敬一の言葉が耳朶に響く。
 こうやって抱かれながらそんな言葉を聞いていると、なんだかもう、いろいろなことがどうでも良くなってしまう。ごまかされていることも、なにもかも。
 快感が高まってゆく。全身に散らばっていた快楽がだんだんと一点に集中し、爆発してしまいそうだ。
「ああ、イイ、イッちゃうよ。菜穂子さん、僕、イッちゃう」
「あ、私も、もう、もう……アアアッ」
 とくんとくんと、私の中で敬一がはじける。最高の瞬間。
 内壁をくすぐる甘い刺激に酔いしれながら、私の身体もクライマックスを迎えた。
「もう、くだらないこと言うなよ」
 私を抱きしめ、優しくキスを繰り返す敬一の甘い体臭に絡まれながら、私は何度も頷いていた。いやだ、頬が濡れている。汗かしら、それとも……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 私はそれから、料理教室に行くのをやめた。若い女性に囲まれた敬一を見たくない。でも月謝だけは払っている。最初に通うと決めた3ヶ月間だけは、払い続けるつもりだ。
 やめたわけではない。行っていないだけだから。
 敬一とももうしばらく会っていない。でもたぶん、コースがいったん終わる3ヶ月後、私のところへ来るだろう。そして甘い言葉とセックスで、私にコースの継続を迫るだろう。
 先日、街を歩いていたら素敵な男性に声をかけられた。ふらふらと喫茶店に着いていったら、その人は太極拳の教室でアルバイトをしているんだと言っていた。
 敬一の綺麗な顔が、その人の精悍な顔にかぶった。
   
 主人は息子に野球をやらせたかったらしい。けれども、私たちの住んでいる地区に適当な少年野球のチームはひとつしかなかった。
 しかもそこは、なんだか親がいろいろやらなくてはならないし、レギュラーになるために寄付とか、監督に贈り物とか、私には信じられない噂も聞いていた。
 そんなわけで、息子にはサッカーをやらせている。サッカーのチームで一番手頃なところは元々がスポーツクラブのやっているサッカー教室なので、月謝はかかるが、親の出番は特になく、コーチや監督との関係もドライで気が楽だ。
 息子と仲のよい友達も入っていて、息子もやりたいな、なんて言っていたから、これ幸いと放り込んだ。
 息子はそれなりに楽しそうにやっている。練習はきついようだが、試合は楽しいらしい。サッカー選手になる、なんてことまで言ってるけど、運動音痴な私の息子だ。全く期待していない。
 夫の方は未だに『野球をやらせたかったのに』『日曜日はキャッチボールに付き合うつもりだったのに、サッカークラブのせいでそれができない』なんてグダグダ言っている。
 子どもの頃のサッカークラブなんて、要するに体力作りと楽しみの場なのだから、野球なんか中学に入ってからの部活でだって、本人にやる気さえあれば十分だと思うのだが、夫に言わせると「それじゃあ遅い」ということのようだ。
 そんなわけで夫は、息子のサッカーに興味がない。サッカークラブを選んだ私への当てつけのように、息子のサッカークラブの試合の日は、別の用事を作って出かけたりしている。大人げないことこの上ない!
 休日の今日も、小学校の校庭を借りたサッカークラブ同士の練習試合があり、私は応援に来ているが、夫は勿論いない。子どもの事だから、練習試合でも、割と皆、気合いを入れて応援している。周りは夫婦で応援に来ている保護者なのに、私は一人。なんとなく寂しい。
 息子も、自分の父親がワザと試合に来ていないことにはいい加減気づいているらしく、試合の前日など、一生懸命サッカーの話を夫にしたりしているのだが、夫は無反応だ。
 息子は、練習試合でも真剣な表情をして駆け回っている。汗だくになって、頑張っている。こんな息子の様子を見れば夫だって変わってくれるかもしれないと思う……。
 でも、息子には申し訳ないが、夫が来なくてもいいやと、むしろ来ないで欲しいと思う理由が、私にはあった。

 試合の途中、私はそっと、校内に忍び込む。試合は佳境に入っている。息子はさっき、メンバー交代で今はベンチだ。
 サッカーチームの選手や保護者に使用許可が出ている校舎一階のトイレに入るフリをし、人がいないのを見計らって、私は階段を上まで一気に駆けあがる。
 屋上入り口の前で、彼は待っていてくれた。
「お待たせしましたか?」
 階段を駆けあがったため、乱れた呼吸を整えながら、私は聞いた。
「いいえ。大丈夫ですよ」
 彼は、いまだにハァハァと息を荒くしている私を、そっと抱きしめてくれた。

 彼と関係を持つようになったのは、半年くらい前からだろうか。
 サッカークラブの試合のたび、夫婦揃って応援に来ている保護者の中で、母親一人で来ている私は、肩身の狭い思いをしていた。
 勿論、周りの父母はそんなこと気にはしていなかったろう。けれども私はどうしてもそれが気になってしまっていたのだ。自然と目は、私以外で片親だけで応援に来ている保護者を捜してしまっていた。彼は、そんな保護者の一人だった。
「妻はミーハーなところがありましてね、息子にフィギュアスケートをやらせたかったようなのですよ。資料を取り寄せていましたが息子は全く興味ないし、親のエゴで子どもにやりたくないことを押しつけるのは良くないと私が反対しましてね、息子が入りたがっていたサッカークラブに入れたんですよ。ところが、それが面白くなかったらしく、すっかり妻はヘソを曲げてしまいました」
 偶然話す機会があり聞いたところ、そんなことを言っていた。私の夫も実は野球をやらせたがっていて――なんて私も話し、一緒に連れ合いの愚痴をこぼし合ったのだった。
 彼とは年も近く、偶然出身地も同じだったこともあり話も合った。それに彼は、私の好みのタイプだった。彼の方もそれは同じだったようで、私たちはすぐに親しくなったのだ。
 けれども、夫婦ばかりの中、夫婦でもなんでもないサッカークラブメンバーの母親と父親があまり親しくしているのは、なんとなく体裁がよろしくない。しかも彼の息子とうちの息子は学年も離れており、仲がよいわけではなかったからなおさらだ。
 そんなわけで私たちは、会ってもちょっと話してすっと離れたり、互いに目配せし合ったりという気遣った関係が続いていた。そんな関係が次第に秘密を共有し合うような感じで心を近づけていったのかもしれない。
 サッカークラブの保護者交流会のあと、彼と肉体関係を持ったのは、ごく自然の流れだった。
 
 私がスカートを穿いてる日はOK。そんな合図になっていた。私たちは頃合いを見計らい、校舎の屋上や更衣室の裏手――市民運動場などでサッカーの練習や試合があるときはそれこそ適当に、その時によって好きな場所で短い逢い引きをする。
 今日は、屋上。
 彼には特技があり、奇妙に曲げた針金で簡単な錠前は外してしまう。最新式の鍵なんかは無理なようだが、ここら辺の校舎は古いタイプの鍵だから、容易に開けられるようだ。
 誰もいない屋上の踊り場。彼は既に屋上へ入る単純な鍵を開けていた。
 こんなに簡単に開く鍵でいいのだろうか? 少し心配になるほどだ。
 屋上へ出ると、青い空に、校庭から聞こえる子ども達の歓声や応援する保護者の声が広がる。
 私たちは屋上入り口近くの、金網に仕切られている貯水タンクの裏に入り込んだ。ここなら周囲から見られる心配もないし、万が一誰かが屋上に上がってきても、息を殺して隠れることができる。
「1ヶ月ぶりだね」
「寂しかったわ」
「本当に?」
「本当よ。あなたの家に電話しちゃおうかと思ったくらい!」
「家になのか? 携帯にかけてくれればいいじゃないか」
「なんとなくよ」
 私たちはまるで恋人同士のような会話を、向かい合って立ったまま、抱擁しながら繰り返す。
 暑い日だから、彼の身体は汗でじっとりとしている。薄手のTシャツがすっかり湿っているようだ。薄いコロンの香りに彼の体臭が混じり合い、私の官能を刺激する。
 私の身体も、同じようないやらしい匂いを出しているのだろうか? 
「んん……」
 熱い口づけ。夫とはもう、とうにすることのなくなったねっとりとしたディープキスだ。この年になって、キスがこんなにも感じるなんて思わなかった。キスなんて、セックスの前戯だと思っていたから。でも、彼とのキスは、それだけで本番さながらに感じてしまう。粘膜を舐めあい、絡めあい、刺激し合う行為――まさに口唇で行うセックスだ。
 私たちは飽きるまでお互いの舌を吸いあい、時には唇全体を包み込むようにして絡みあう。
 まとわりつく熱い吐息を感じ、陶酔する。ちゅぱちゅぱじゅぽじゅぽといやらしい音が青い空に吸い込まれていく。
「んん、あああ……」
 光る唾液を糸引きながら、私たちは名残惜しく軽いキスを繰り返す。そうしながらお互いの服の中に手を差し込み、肌を求め合う。
「ああ……」
 彼の汗ばんだ大きな手の平が、Tシャツの下から滑り込み、私のブラジャーをたくし上げて、乳房に触れる。
「アア……」
 手の平が、いつのまにか固く凝った乳首を転がす。汗で適度に湿った手の平の皺にひっかかりながら、感じやすい乳首がゆっくりと刺激される。
 時折、手の平は乳房全体を包み、やさしく柔らかく揉みしだく。心臓まで掴まれるよう――。
 その感覚が心地よくて、思わず声をあげそうになる。
「声は、ガマンだ」
 分かっている。だから私は必死で堪える。声のかわりに甘いため息が漏れる。声をガマンしていると、快感がどんどん内に篭もってくるような気がする。
 気持ち良さに、私は思わず腰を落とす。
「相変わらず、感じやすいね」
「……いじわるね」
 お返しに、私も彼のシャツに手を入れ、小さな乳首を強く摘む。
 彼は少し顔をゆがめ、私を切ない目で見る。彼も、その部分が感じるのだ。
 私たちは服をたくし上げて、青い空の下で、お互いの肌を直接こすりつけ合う。
 彼の体温と高鳴る鼓動を感じる。
 校庭から、一層大きな歓声が上がった。子ども達が頑張っているのに、親である私たちがこんな風にしていることに、少し罪悪感を覚える。
 それは彼も同じだろう。すっと身体を離したかと思うと、もう一度私を抱き直した。
「試合、終わる前に戻らないと」
「ゆっくりもできないですね」
「どこかで落ち着いて君と抱き合えたらいのに」
「本当に……でも、難しいわ」
 彼が私の腰にすっと手を伸ばした。

 給水タンクはコンクリートの上に立っている。容赦なく照りつける夏の日差しはコンクリートを熱していたが、日陰部分は比較的涼しく、耐えられないほどではない。
 私はその日陰部分に仰向けに寝ころび、彼の体重を支えた。
 服は着たまま、スカートをたくしあげ、下着は、折って立てた片方の膝にぶら下げる。
 彼はズボンと下着を適当におろして、既に勃起しているペニスを取り出すと、私の上に覆い被さる。
「ああ……」
 彼のペニスに触れる。それは彼の体温よりも一段と高く、熱い。真夏の太陽のようだ。
 強く握ると一層熱く燃える。このままいつまでも握りしめ、できたら舌を這わせてその熱さ固さを実感したい――。
 けれども、お互いに結婚している私たちには短い逢瀬しか許されていない。名残惜しく思いながら握りしめたペニスを、濡れて涎を垂れ流す私の脚の間へと誘う。
「ん、んんん……アアッ!」
 彼の男らしい勃起が私の淫乱な膜を拡げ、切っ先から滑り込んでくる瞬間は、いつだって声が漏れてしまう。
 逢瀬自体は何度も重ねているはずなのに、この瞬間だけ、処女に戻ってしまうかのように緊張する。彼と繋がるのが狂おしいほどに心地よい。セックスなんて、もう飽きるほどやってるはずなのに……実際、夫とのセックスなんて飽きていて、オナニーのほうが楽で気持ちいい、とまで思っていたはずなのに。
「アアア……っ!」
 彼は私の中に入りながら、唇で、声を漏らす私の口を覆う。
 彼の舌と彼のペニスが、同時に私の粘膜を犯す。一瞬、周りの音がなにも聞こえなくなる。
 気持ちいい……。
 唇を離した彼が抽送を繰り返すたび、私の秘壁はピクピクと痙攣し、滾る肉棒に絡みつく。
 同じように、声をガマンしているのだろうか、彼の顔に苦痛にも似た表情があらわれる。ハアハアと息は荒く、流れる汗が顎から私の頬へと落ちる。
「ん、んんん……」
「ンアア、ハァハァハァ……」
 大きな歓声と共に、試合終了を告げる笛の音が響いた。
 彼の腰の動きが早く、激しくなった。ガマンできず、私も自分から腰を動かして彼の身体に打ちつける。
 肉のぶつかり合う淫らな打音が、開放的な屋上の空気に吸い込まれていく。
「んん、ああ、ああ」
「く……」
「もう、もうイッちゃう」
「声、大きいぞ」
 思い切り小さな声で話したつもりなのに。快感で耳がおかしくなっているのかもしれない。
「あああっ……ン、ンンン! ああ、お、思い切り声あげてあなたとしたいよぉ」
「俺もだよ、君のいやらしい声、いっぱいいっぱい聞きながらいつまでもこうやっていたいよ」
 再び彼の唇で口を塞がれながら、私は四肢を震わせ昇りつめる。
 強く抱きしめた彼の背中は、じっとりと汗ばんでいた。

「お母さん、どこ行ってたの? ちゃんと見てた?」
「ゴメン、ちょっとね、トイレ行ってたのよ」
 少しだけむくれている息子に微笑みかけながら、ちらりと視線を彼に流す。
 彼もこうやって子どもに何か言われているのかな。そして私と同じように、子どもに罪悪感を感じているのかな――。
  
「ねえ、ここらへんにさ、あそこ以外の鍾乳洞ないの?」
 和雄が近くを通りかかった小学生に声をかけた。
「あそこって、あそこ以外?」
 小学生が不思議そうに、私たちと、目の前にある観光鍾乳洞の入り口看板とを見比べる。
有名な観光鍾乳洞だ。中は綺麗にライトアップされており、通路も手すりもある。たった今行ってきたばかりだ。
「うん。ここはね、さっき行ったんだ。けれどなんていうか……もろ、観光名所だろ」
「うん。遠足で行った」
「もっと小さくてもいいからさ、土産物屋も手すりもない鍾乳洞行ってみたいんだよ」
「そうかぁ」
 小学生は、最初私たちふたりを警戒している様子だった。それはそうだろう。
 大学生の私たちは、明らかに観光客ですといった出で立ちをしていたし、今時の小学生は皆『知らない人に声をかけられてもついていってはいけません』くらいの事は言われているだろう。
 だが、人の良さそうな和雄の笑顔に安心したのか、小学生はニコニコしながら、自分の知っているという小さな鍾乳洞へ案内してくれた。
 すこし遠かったが、歩けない距離ではない。
「あそこの鍾乳洞、中が迷路みたいになっててね、観光で行けるのはそのうちの一番大きいとこだけなんだ。手すりとかあったでしょ」
 小学生は得意げに説明してくれた。
「ホントはね、あちこちに道や出口があるけど、行けないようにロープが張ってあるんだよ」
「うん。僕らもさっき、立ち入り禁止のロープを見たよ」
「繋がってるとこ、いくつか知ってる。でもね、本当は入っちゃいけないんだ。学校でね、ダメだって言われてるの」
「でも、入ったことあるんだ?」
「だって、みんなも入って遊んだりしてるよ」
 小学生は少し不安そうな顔で、和雄を見た。和雄は安心させるかのように
「大丈夫、先生には内緒だよ」
 と笑った。

 小学生が案内してくれた鍾乳洞というのは、林の中の小山に開いた、単なる穴に見えた。小学生だといいのだろうが、大人だと腰をかがめてくぐらなければ、中に入れそうもないほど小さな穴だ。
 確か、クマとかそういう動物の巣がこんな感じではなかったか?
「ここ、本当に洞窟なの?」
「入れば分かるよ。中は広いよ。本当だよ!」
 小学生に礼を言って別れた私たちは、とりあえず懐中電灯を持ち、とにかく入ってみることにした。
「俺が先に行くよ。しかし小さい穴だな。入れるかな?」
「ねえ、私スカートなんだけど」
「どうせふたりなんだから構わないよ」
「虫とかいっぱい出そう……」
「虫くらい平気だろ。大丈夫だよ」
 大きな洞窟に繋がっている小さな洞穴、というシチュエーションに子供心が刺激されたらしい和雄は、行く気満々だったが、私は躊躇していた。
 どう考えても、服が汚れる。ずっと狭い穴が続くのかと考えたら目眩がした。
 だいたい、私は普通の観光鍾乳洞で十分満足していたのだ。それなのに和雄ったら……。
「おーい、中は広いぞ! 早く来い!」
 穴の奥から、和雄の呼ぶ声がした。
 和雄に新しい服、買わせてやる――! 私は思いきって地べたに手を付け、膝をついた。真っ黒な穴の向こう側に、和雄の懐中電灯の明かりが動く。
 肩にかけた鞄がひっかかって、上手く進めない。土が顔にかかる。気持ちが悪い。なにがが背中を這っているような気がする。
「早く来いよー」
 和雄の声が、こだまして聞こえた。本当に中は広いようだ。けれど、この狭い通路がなかなか通り抜けられない。
「もういやだ!」
 吐き捨てながら真っ暗の中を、とにかく明かりを目指してしばらく進む。
 空気の張りつめたような冷気とともにだんだんと道は広くなり、少し楽に動けるようになる。やがて立って歩けるほどに広がる。
「うそ……」
「ようこそ、お嬢さん」
 和雄の懐中電灯に照らされた8畳ほどの空間が、目の前に広がった。
 懐中電灯で四方を照らす。確かにそこは鍾乳洞っぽい。
 足下に気をつけながら奥まで行ってみる。道が再び狭くなっている、その先から空気が流れてくる。ずっと行くと、あの大きな鍾乳洞に繋がるのかもしれない。
「おい、気をつけろよ」
 穴に気を取られ、足下のおぼつかなかった私の肩を、和雄が抱いた。
「すごいな……。寒くないか?」
 確かに、かなり涼しい。
 和雄が懐中電灯を下に置き、自分の着ていた薄手の上着を脱ぐと、私の肩にかけてくれた。
「ありがとう」
 観光鍾乳洞では、そんなコトしてくれなかったのに。変な感じだ。
「しかしここいいな。ちょっとワクワクする」
 和雄はそんなことを言って、うろうろと歩き回っていた。真っ暗な中、懐中電灯の灯りが揺れる。
「おい、こっち来てみろよ」
 呼ばれていくと、和雄は壁を明かりで照らした。
「落書きね」
「ああ。さっきの小学生の仲間達だろう。、こんなところに落書きしてるよ。なにで書いたんだろう?」
「塗料?」
「うん、なに使ったのかな。擦っても落ちない」
 真っ暗で涼しい、静かな空間。わずかな明かりにふたりで顔を寄せ合っていると、なんだか新鮮な気分だった。
「我が儘に付き合ってくれてありがとうな。服も髪も、汚れちゃったな」
「ううん、いいよ」
 和雄の手が、私の髪を撫でる。
「あ……」
 なんだかゾクゾクした。和雄の唇が私の頬をかすめ、耳朶をくすぐった。
 世界中に、和雄と私のふたりきり……そんな錯覚に震える。
 和雄の方も、同じ感覚だったのだろう。かなり大胆に私の耳を噛み、手を服の中に入れてきた。
「ああ……」
 乳首を指で摘まれ、私はため息をこぼした。
「声だして大丈夫だよ。外には聞こえやしない」
 和雄が意地悪く言い、更に強く、乳首をこりこりと指でこね回す。
「ああ、ああ……」
 立っているのが辛いほどに感じてしまう。ひんやりとした空気の中、密着した和雄の身体がいつもより熱く感じられた。
「脱いじゃえよ」
「寒いわ」
「すぐ温かくしてやるさ」
「誰か来たら……」
「来ないよ」
 和雄が、懐中電灯を消した。真っ暗な中で、和雄の体温だけが感じられた。

 ひんやりとした洞窟内で、私は全裸で立っていた。
 寒さはあまり感じなかった。何より、真っ暗な洞窟内でこんな格好になっているということに言いようもない興奮を覚えていた。
「よく見せて」
 和雄が、私の身体を懐中電灯で照らす。 白い光が私の身体を舐める。足下からゆっくり上へあがり、股間で少し止まる。それから再び動きはじめ、胸元で止まる。
 暗闇に照らし出される私の裸体はどんななのだろう? 少しは綺麗に見えるのかしら。
 妙になまめかしい気分で、身体が熱く火照っていく。
 闇に、和雄の息づかいが響く。がさごそという音がする。和雄も脱いでいるのだろう。懐中電灯の明かりが揺れる。
 和雄がなにをやっているのかがよく見えないのは、不安だ。暗い中、ひとりだけ取り残されたような気がする。身体になにもまとっていないという状態も私を心細くさせる。
 やがて、明かりが消えた。
「和雄……」
 声をかけるが返事はない。あたりは真っ暗だ。そっとしゃがみ、手で下に置いたはずの懐中電灯を探る。
「和雄?」
 不安でたまらない。和雄の気配を探すが、よく分からない風の音や、水の音だけが耳に入る。懐中電灯を探し当て、明かりをつけて和雄の姿を探す。
「和雄!」
 その時だ。背後からいきなり私は抱きしめられた。
「きゃぁっ!」
「ちょっとスリルがあったろう?」
 和雄だ。和雄の体温が、地肌を通して冷えていた私の身体を包む。
「ああ、和雄……」
「真っ暗って怖いよな。俺もちょっと怖かった」
 和雄はそう言いながら、私の首筋に唇を寄せる。
「ああ……」
 私は身体を返し、和雄の唇にむしゃぶりついた。懐中電灯が下に落ち、消えた。再び闇があたりを支配し、恐怖はやがて新鮮な官能に変わっていく。
「和雄、和雄」
 和雄も夢中で私の口唇を嬲り、苦しいほどに強く激しく熱い手の平を私の体躯に這わす。
「ああ……」
 密着した和雄の下半身が、今までなかったほどに固く熱く感じられた。和雄のって、こんなに立派だったっけ?
「今度は、私に、コレ、見せて?」
 しゃがんで懐中電灯を拾い上げると、2度3度振ってみた。明かりが切れたのは落ちた衝撃によるものだったらしく、すぐに明かりがついた。
 私は明かりを、和雄の股間に向ける。グロテスクなほどに猛々しいそれが闇に浮かび上がる。指でそっと触れると、それはドクンドクンと脈打った。
 口を開け、それを包み込む。
「うう……」
 洞窟に、じゅるじゅるとペニスを啜りあげる音が響いた。
「ダメだよ、出ちゃうよ……」
 和雄の、苦しげな声がした。熱い肉塊は私の口中で苦しいほどに脈打ち、やがて切っ先から苦いものがにじんだ。
「やらさせろよ」
 どちらかというと穏やかな和雄の口から、そんな乱暴な言葉が漏れた。新鮮な響きに身体が熱くなる。
「やらせろ」
 和雄の手が、肩に掛かり、私は引き上げられた。
 体の向きが変えられ、背後から私は腰を和雄に支えられた。
「行くぞ、挿入るぞ」
 立ったまま、私の尻肉が左右に割られた。そして熱い塊が濡れきった私の秘肉を滑り、膣内へとねじ込まれていく。
「アアアッ!」
 立っているのが辛いほどの強い刺激が私の中を駆け抜けた。私は腕をまわし、背後の和雄に廻した。
 和雄は私を抱きかかえ、支える形で、私を貫き続けた。
 いつもとは全然違った。
 いつもだったら私の反応を見ながら、浅く入れたり深く入れたり……調整しながら私を高みに上げていくようなテクニックを使う挿入をする和雄だったが、闇の中で野性的な面が強く出たのだろうか。
 和雄はまるで獣のように、荒々しくひたすらに、むやみやたらといった風に私を突きあげ続けた。
「ああ、ああ、アアァァァ」
 テクニックはおろか、愛すらも感じられないセックスだった。欲望のままにむさぶる様な……けれども少なくとも私にとっては、それが心地よくてたまらなかった。
 私たちはふたりとも、文明の明かりが届かない暗闇の中で、野生にもどったのかもしれない。 
 腰の砕けに耐えきれず、私は地べたに手と膝を付いた。なんだかびちゃびちゃとしたものを感じたが、不思議に、汚いとも、汚れるとも感じなかった。
 四つんばいの格好になった私を、和雄はバックから犯し続けた。
 私は何度も何度も昇りつめ、和雄も好きにほとぼりを私の尻に散らした。
 私たちはどれくらいの間、そうやって本能だけで粘膜を擦り合わせていたのだろう。
 やがて私たちはぐったりと地べたに尻をつけて、身体を寄せ合った。

 洞窟でのアレは、私たちのその後にほんのちょっぴり変化を与えた。
 あの暗闇でのスリル、本能のままに貪り合う快感――。あれを求め、私たちは週末になると外へ出かける。
 誰もいない、小さな洞穴を……野生に戻れる私たちだけの秘密の場所を探して、車で出かける。
 河原や林道、山中にも入り、好きなところでセックスを重ねた。
「絶対もう、他の女とつきあえないよ。お前くらいだよ、こんな事につきあってくれる女は」
「こっちだって同じよ。綺麗な部屋の中でのセックスなんて、もう出来ないわ」
 明かりのない山中で全裸になり、虫に刺されながらもお互いを貪りあいながら私たちは、そんなことを語り合うのだ。 
「すみません、ちょっといいですか?」
 声をかけられたが、私は振り返りさえしなかった。友人の美樹子は私の腕を、汗ばんだ手で強く掴んだ。
 初夏の海辺は、ナンパのメッカだ。今日は女ふたりきりでのんびり海水浴を楽しもうと思ってやってきたのだから、無視するに限る。それに美樹子は、ナンパとかそういうのに慣れていない。
「ケーブルテレビの取材なのですが」
 続けてそう言われ、え? と小さく声を出して、まず美樹子が振り返った。続いて私も振り返る。
 後ろには、下半身水着、上半身にはラフなシャツを着た、三人の男が立っていた。どの男も、二〇代後半から三〇代といったところだろうか。カメラを抱えている男以外はサングラスをかけていて、顔はよく分からない。私たちに声をかけてきた男は、小さなマイクを持っていた。
「お時間とらせてスミマセン。近くのケーブルテレビの製作スタッフなのですが、海水浴場の取材をしているんですよ。それで、良かったらインタビューお願いできませんか?」
 美樹子と私は顔を見合わせた。
「靖恵がいいなら、私はいいよ」
 美樹子は私に丸投げだ。美樹子はいつだってそう。人任せだ。
 大人しいタイプで、非社交的で地味な子だ。人によっては彼女を『暗い子』といって敬遠する。私は自分では明るく社交的な方でタイプは違うが、すごく気が合う。
 私は少し考えたが、美樹子が興味ありげだったので、インタビューを了承した。
「ありがとうございます。では」
 カメラマンがカメラを向ける。同時に、周囲の目が私たちに集まる。
「お二人はご友人同士ですか?」
「はい」
「こちらへはおふたりだけで?」
「そうです」
「どちらからいらっしゃいましたか? 車で? 電車で?」
「えーと……」
 美樹子が周囲を気にし始めた。砂浜の真ん中だ。大人達はちらちらと見るだけだが、好奇心丸出しの子どもは立ち止まってじっと見ている。
「ここだとちょっと……アレですね」 
 マイクを持った男の指示で、カメラがしまわれる。
「場所を変えましょうか」
 今更、断れない。私と美樹子は男たちについて人気のない岩場へと足を運んだ。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
「だって、君たち特に可愛かったし、ビキニのセンスもいいじゃない」
「そんなことないですよぉ」
「いやいや。なんだかんだいってもさ、テレビだとビジュアル優先になるんだよ。君たちだったら絶対だと思った」
 男達はなかなか口が上手い。カメラの男は無言だったが、マイクを持った男と、脇で……アシスタントなのだろうか、帽子を深めにかぶり、ノートを手にした男の二人がかりでおだてられ、私も美樹子もかなりテンションがあがっていた。
 特に、美樹子の浮かれぶりは異常なほどだった。5年ほど友人として美樹子と付き合っているが、彼女がこれほど頬を上気させ、楽しそうに異性と話しているのを私は見たことがなかった。
「で、君たちスリーサイズは?」
「えー、そんなことまでぇ」
「いいじゃない。えと、じゃあ美樹子ちゃんから教えてよ」
「いやだー、恥ずかしいし、最近計ってないから、だいたいでいいですかぁ?」
 美樹子はかなり上機嫌だ。身体をくねらせ、目を輝かせてカメラの前でポーズまでとっている。その様子を見ているうちに、私の方は少し熱がひいてきた。
「ちょっと、美樹子!」
 カメラは、美樹子や私の身体を、足下から舐めるように撮影していた。
 ケーブルカメラの取材といっていたけど――。煽てられて少々浮ついた気持ちになっていたが、よく考えると少しおかしい。
「美樹子ちゃんDカップか! いや、大きいなとは思ってたけど。じゃあ、彼氏は幸せだね!」
「彼氏なんていませんよー」
「うそー。今二十三歳だっけ? じゃあ経験人数は?」
「えー」
 カメラは美樹子の胸元を舐めている。これはちょっといくらなんでも――変だ。私はかなり冷静さを取り戻していた。
「ちょっと、ねえ、美樹子!」
「あ、ごめんね、靖恵ちゃんにも聞こうかな。靖恵ちゃんは、OLさんだったよね。彼氏いるの?」
「いえ、そうではなくて……」
 私は美樹子の腕をぐいと掴んだ。
「ケーブルテレビの取材というお話しでしたよね?」
「はい」
「スタッフ証かなにかお持ちでしたら、見せてください」
「いいですよ。おい」
 マイクを持った男に指示を受け、帽子を深めにかぶった男が私についてくるようにと言った。
 かなり高揚している美樹子をひとり残すのは少々不安だったが、彼女だって子どもではない。いくらなんでも、そうそうおかしなことにはならないだろうと、私は男についていった。
 岩場から五分ほど離れたところにとめてあったライトバンが、彼らの車のようだ。このあたりは人もおらず、駐車している車も他にはない。
 男達の車は見たところ、なんの変哲もない白のライトバンだ。テレビ局のマークもなにもない。男は後部座席を開けてなにかをとりだした。
「これ、撮ってるの」
 男がにやりと笑って差しだしてきたそれは……
「ちょっと、これ!」
 私は唖然としてそれを見つめた。素人娘なんたらかんたら――と題されたDVD……。モザイクのかかった顔で、丸出しにした乳房を鷲づかみにしているパッケージのそれはどう見ても、成人指定のエロDVDだ。
「ケーブルテレビって……」
「まあ、似たようなモンでしょ。エロい有料チャンネルの撮影」
「……美樹子!」
 走り出そうとした私の腕を、男が強く掴んだ。
「美樹子ちゃん、今頃喜んでエッチな格好してると思うよ? ちょっとオッパイみせてよ、イヤン恥ずかしいわ、友達は今いないからさ、早く! えー、じゃあちょっとだけぇ、なーんてね」
「なにを……」
「俺たち、ずっとこの業界にいるんだぜ? ああいう、結構カワイ目だけど引っ込み思案ぽくておとなしめタイプの女の子の方が、いざ持ち上げられまくると有頂天になって大胆になっちゃうんだって、経験で分かってるのよ」
 頬を紅潮させて、エッチな質問にはしゃいでいた美樹子の姿が脳裏に浮かんだ。
 男は口元をだらしなくにやけさせたまま続ける。
「そして、君みたいなタイプはさ」
「私が、何よ」
「はしゃいで満足してる友人を、とめることができない。それどころか、変な競争心を燃やしちゃうんだよね。君、心の底では地味な友人のことバカにしてるでしょ? 自分の方が女として上だって、いっつも思ってるでしょ」
 男はけらけら笑って、私の腕を掴んでいた手を、そっとゆるめた。
 私は男を睨みつけ、急いで美樹子の元へ向かった。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
「えー、いやだ、恥ずかしい」
「ちょっとだけだからさ! ほら、顔にはモザイク入れるから。テレビ観てる人に、サービスサービス。ね、手をどけてDカップのオッパイ見せてよ?」
「じゃあ……ちょっとだけ」
「視聴率アップ間違いナシだよ! 乳首ピンク色ですごい綺麗ね。ちょっとだけつついてみてもいい?」
「えー、それはちょっと……」
「つついちゃえ!」
「あ、ああん!」
「おお、その声めちゃくちゃ可愛い!」
 息を切らせて走ってきた私の目の前に、信じられない光景が――いや、予想通りといった方がいいのだろうか。
 岩場に腰を下ろした美樹子のビキニははずされ、乳房が剥き出しになっていた。 男はマイクをほっぽり出して乳房を揉みしだき、美樹子は笑顔であえいでいる。
「感じやすいんだねー。もっとモミモミしてみようかな?」
「あ、あんん!」
「乳首ピンピンだぁ。舌でちょっとつついちゃお!」
「ああん! イヤン、ねえ、こんなの放送するんですかぁ?」
「美樹子ちゃん可愛すぎだからさー。深夜に良く、エッチな番組やってるでしょ? あっちに廻すよ~」
「えー」
「こんな可愛いオッパイ、見せないのもったいないよ、いいでしょ?」
「うーん……ちょっとだけですよ?」
「やった! じゃあさ、下もチョットだけ……お尻だけ見せてよ?」
 私はその光景を、岩の影から唖然として眺めていた。
 美樹子は男に煽られるままにビキニの下を脱ぎ捨て、手をどかす。男は流れるような口調で美樹子の脚を広げさせ、そこに手を添える。
 カメラが美樹子の身体を隅々まで追う。
「友達帰って来ちゃうから……」
「大丈夫! お友達の方は、あっちで普通の取材してるよ。可愛い美樹子ちゃんはこっちで深夜番組の取材!」
 美樹子が勝ち誇ったような笑顔を見せたのが見えた。
 友達より君の方が可愛いから――そうおだてられ、美樹子は開いた脚の間に男の舌をいれられ、わざとらしく思えるほどに声をあげている。
 私は震えていた。脚が凍ったように動かない。騙されている美樹子が気持ちよさそうにアクンアクン喘いでいるその場に、足を踏み入れることができなかった。
 今私が出ていって、すべて嘘だ、男達は美樹子を騙しているのよ、なんて、とても言えない。
「お、やってるね」
 肩に手を乗せられ、はっとして振り返った。帽子をかぶった男だ。
「今回、ペース早いな。君のお友達、もう脚開いちゃってるんだ。淫乱系?」
「そんなこと……っっ!」
 肩におかれた男の手が、私の胸元に伸びる。
「はっきり言うけど、君の方が上玉だよ。綺麗だし、スタイルいいし、冷静だし頭もいい。馬鹿な女だと、ここで大騒ぎして女友達のプライドをズタズタにしちゃうんだよね」
 男が耳朶に囁く声の向こうから、アンアンという美樹子の甘いよがり声が、聞こえた。美樹子はカメラの前で男のペニスを受け入れ、無我夢中でよがりくるっている。
「俺らも楽しんじゃおうぜ? カメラなしでさ」
 男の手は、私のビキニのブラの中に滑り込んでいた。いやだ私ったら、いつの間に乳首がこんなに勃っていたんだろう? 男の手がじっとりとしていて、熱い。
「君みたいなまともな子は、あんな風にカメラの前できゃあきゃあ言いながらはしたない声をあげることないんだよ」
 男の唇が、首筋をなぞる。
「あ……」
 私どうしてこんなに、火照っているんだろう。美樹子のいやらしい姿を見て興奮した? まさか!
 下半身が湿っている。汗なのかしら、それとも――。

「ん、んん」
「すごい、すごい締まって気持ちいいよ。もう少し長く楽しみたいね……」
 私はビキニの下を脱ぎ、岩に手を付いて立ったまま、男のペニスを受け入れていた。岩の影から、マイクをあそこに突っ込まれ、男の肉棒をほおばり、だらしない声をあげている美樹子が見えた。
 私は違う、あんなバカじゃない。
「ああう……」
 私の尻を掴み、ピストンを繰り返している男は、なかなかのテクニシャンだ。私を焦らし、ここぞというタイミングでピストンを早める。そして私がイキそうになると、再び腰の動きをゆるめ、私を焦らす。
 たまらない。太陽の下でのこんなにも開放的なセックスは初めてだ。けれど、すぐそばでみだらな姿を晒している美樹子にバレるわけにはいかないから、必死で声を殺す。美樹子は私に一部始終を見られているなんて知らない。そして、そのぱっくりと脚を広げたまぬけな姿が編集され、エロDVDとして他の何人もの女達と共に不特定多数の目に触れることになるなんて気付いていないはずだ。
 美樹子は今、自分は特別だから、こうなっているのだと信じている。
 友人を裏切っている背徳感が、私を高揚させていた。
 普段のセックスよりずっと、強く、深く感じてたまらない。快感で血が沸騰し、高熱を出したときのようにぼんやりする。
「もう、もうだめぇ……」
 息が苦しい、喉が乾く。感じすぎて、辛いほどだ。
「俺も……イク……」
 男のピストンがグンと早く強くなる。やがて私がクライマックスを迎えると同時に、胎内に生温かいものを感じた。
「ああ……」
 ペニスが抜かれた瞬間、脚の間から精液がだらりとこぼれた。
「なにか拭くもの、ないの?」
 男の短い叫びが聞こえるより、私の手が脇に置かれた男の鞄に触れる方が先だった。
 鞄の中には隠しカメラが――。
「お隣の柏田さん、おめでた?」
 ある日、共同ごみ収集所でちょうど会った下の奥さんに、私はそう聞かれた。
「え? 柏田さん?」
「そう302号室の柏田さん。うちの娘がね、産婦人科に入っていく柏田さんを見たって言ってたのよ」
 なんだか、胸がドキドキした。これ以上、この話を続けたくない。
「さあ? 私はなにも……」
 会釈をして、その場を去ろうとした。けれども、その奥さんは私を離してくれない。
「ねえ、佐々木さんから柏田さんに聞いてみてよ。あのね、うち、子どもが小さかった時の肌着とかおもちゃとか……おむつカバーとかね、捨てらんなくて、取っておいてるのよー。もし柏田さんが出産なら、まとめてあげようと思って」
 あげる? 押しつける、の間違いじゃないの? 私は心の中で毒づき、舌打ちをした。胸の鼓動はどんどん早くなる。なんだかお腹が痛い。早く帰りたい。
「だからね、聞いてみてよ」
「ご自分でお確かめになったら如何です? ついでに、子どものものがあるんだけどってお話しできるじゃないですか」
「もし違ったら恥ずかしいじゃない!」
 私ならよいというのだろうか?
「ほら、佐々木さんところまだ赤ちゃんいないでしょ? だからこう……もしかしておめでた? 羨ましいわぁ、なんて感じで気軽に話が出来ると思うのよ」
 もう限界だ。吐き気もしてきた。
「あっと、私そろそろ部屋に戻らないと。お鍋に火をかけてきたんです!」
 私はそう言い捨てると、ちゃんと聞いておいてね、と叫ぶ奥さんを無視して、息を切らせて部屋に戻った。
 玄関にしゃがみ込む。心臓に手を当てる。まだ動機は収まらない。
 ふとカレンダーを見る。今日は、夫とセックスする日。排卵日だ。
 ****************
 夫と知り合い、結婚して、最初は順調だった。子どもが出来たら子ども部屋も必要だろうから、なんて言って、狭いところを引き払い、今のマンションに越してきた。近くに小学校も中学校もあり、小児科も多い。それに住んでる自治体は子育て支援も充実していると聞いていた。
 3年たっても子が出来ず、病院に行った。私の身体が少々妊娠困難だと、辛い宣告を受けた。
 不可能ではないのだから、まだ若いのだから、いつかできるよと、夫や実母には慰められた。
 マンションのローンがきつく、私は持病があってフルタイムで働くことが出来ないため、本格的な不妊治療は行えない。
 子どもが欲しい。欲しい!
 子どもがいないから、自分は不幸なのだと思う。基礎体温を計り、排卵日を求め、その日に子作りのためのセックス。それ以外の日にはやらない。
「子どもいないんだから、暇でしょ?」
 子どもがいないから、マンションの管理自治会の仕事も押しつけられる。
 事情を知らない、義母からの孫はまだか攻撃も未だ続いている。
 夜中に赤ん坊の泣く声が聞こえたり、母にしかられ泣いている子どもを見かけたりすると、たまらなく辛い。
 隣の部屋の柏田さんの奥さんは、私より三つ年下だ。
「私、子ども嫌いなんですよ。もちろん、作るつもりはないです。隣が、子どものいないお宅でよかったー」
 入居の挨拶時、無邪気にそう言い放ったっけ。私があの時笑顔の下で、どれくらい傷付いていたか。
 その柏田さんが妊娠ですって? 私は動揺が隠せなかった。
 ****************
「ああ。バスで旦那さんに会ったんだけど、そう言ってた。初めて聞いたのが二ヶ月くらい前だから……もう随分になるよ。おまえ知らなかったのか?」
 帰宅して、シャワーを浴びた夫に、下の奥さんにこんなことを言われて辛かったと訴えたら、あっさりそう言われた。
「どうして話してくれなかったの!」
「だっておまえ……」
 誰々が妊娠したって話聞くと、落ち込むだろう――夫はかろうじてこの言葉を飲み込んだらしい。
「ねえ、あなた、お夕食は召し上がってきたのでしょ?」
「ああ、食べてきた」
 夫はいつだってそうだ。会社の同僚やら取引先の人なんかと食事は済ませて帰宅する。私の顔を見ながら、食事はしたくないと非難されているように感じる。
「じゃあ、そろそろ……」
「あ? ああ」
 夫の顔が曇る。わざとらしくカレンダーに目を向ける。
「分かったよ、やるよ」
 わざとらしいため息。すたすたと寝室に行き、ズボンをおろす。
「ほら、来いよ。疲れてるんだ。さっさとやっちゃおう」
 ムードもへったくれもない。もう数年、こんな感じだ。
 慣れたとはいえ、やはり傷つく。だが、きっと夫の方も同じなのだろう。いつだったか、酔った勢いで
「俺はおまえにとって子作りの道具」
 なんて言っていた。
 寝室に行き、私はネグリジェをまくり上げる。夫は面倒くさそうに私を抱えてベッドに横たえ、下着を脱がす。そして傍らのゼリーを陰部に刷り込み、ぐいと腰を張らせる。
「あ……ううっ!」
 潤いもしていない乾いた膣壁が、夫のものをねじ込まれ、悲鳴をあげる。
 夫の顔は正常位に向き合った私に向けられているものの、目は、全然違うものを見ているように思えた。
 せめて、キスでもしてくれたらと思い、そっと首に手を回した。
 だが夫は全く意に介さず、やがて目を閉じてピストンを繰り返しはじめる。 
「ああ、あああっ!」
 物理的には、感じる。やがて膣も潤いはじめ、身体が火照りはじめる。
「ううう……っ」
 けれども、私が高みに達する前に、夫は放出を終え、これで仕事は終わったろう? とでも言わんばかりの態度で背を向けた。
「ねえあなた、自分でなんてしていないでしょうね? なんだか、量が少なかったような気が……」
「してないよ!」
 私は夫を愛していた。愛していたからこそ、ふたりの子どもが欲しかったはずだった。けれども夫との関係は悪くなる一方だ。子どもさえ出来れば、また仲良くなれるのだろうか? 
 ****************
 お隣の柏田さんはいよいよ臨月に入り、里帰りをすることになった。
「お産は実家でするって決めていたんですー。赤ちゃんすごい楽しみ! 佐々木さんはどっちだと思いますか? 男か、女か」
「さあ?」
 大きな荷物とお腹を抱えた柏田さんと話をするのはきつすぎた。けれど、きっと赤ん坊を連れて帰ってきたら、私はもっと耐えなければならなくなるのだろう。
「帰ってきたら、赤ちゃん見せにきますね! あのね、母親学級で言われたんですけど、育児ノイローゼって言うのがあるんですって。それを防ぐためには、赤ちゃんを近所の人に預けて、たまにママひとりで外出したりするといいんですって!」
 この妊婦は何を言っているのだろう? まさか私に赤ん坊を預かれと、まだ産みもしていないうちから言っているのだろうか。
「ほら、そろそろ行くぞ」
 柏田さんのご主人が、困ったような表情を私に向け、深々とお辞儀をする。奥さんが無神経な分、どうやらご主人は思慮深い人のようだ。
 難産になればいいんだ。苦しんで苦しんで産めばいい! そんなことを思ってしまう自分の狭了さに、私は愕然とするばかりだった。
 ****************
「いいんですか、本当に?」
「どうぞどうぞ」
 ある日のことだった。会社帰りの柏田さんがうちにゴーヤを持ってきた。会社の人に頂いたのだが食べ方が分からないのでもらって欲しいと訪ねてきたのだ。だったら一緒に食べましょうと、私は半ば無理矢理に柏田さんを家に誘った。
 柏田さんはなかなか出来た人だ。奥さんとは大違い。
「すごい、上手いな。ゴーヤってこんなにおいしかったんだ!」
 私の作ったゴーヤチャンプルを夢中でかき込む柏田さんをぼんやり見ながら、ああ、こんな人が夫だったらいいのにと、そんなことを考えていた。夫は家で食事をしない。最近では、殆ど話しもしてくれない。帰宅は私が寝たあとだ。
「そう言えば、ご主人はまだご帰宅なさらないんですか?」
「ああ、出張中なのよ」
 ホントに出張中だかあやしいものだ。最近、香水の香りを付けて帰宅したことがあった。
「あ……。そうなんですか。おっと、ちょっと失礼します」
 柏田さんの携帯が鳴った。
「もしもし、ああ。順調か? そうか、よかった!うんうん。そうだな、今度の休みにはそっち行くよ……」
 奥さんからの電話か――。
 私はなんだか、無性に腹が立ってきた。私はこんなに不幸なのに、どうしてあの、子どもは嫌いだと言い放った奥さんだけが、幸せなの? 
 ぶちこわしてやりたい。
 理性で押さえることが出来ないほどの、激しい衝動だった。
「うん、じゃあな、先生の言うこと聞いて身体大事にしろよ」
 電話を切って、こちらに顔を向けた柏田さんが、ぎょっとしたような表情を見せた。
 それはそうだろう。隣の奥さんが、下着姿でそこに立っていたのだから。
「お、奥さん?」
 柏田さんは、殆ど椅子からずり落ちそうになっている。 
「私、ずっと柏田さんのこと好きだったんです……」
 私はずりずりと距離を詰めていった。
「柏田さん……」
 柏田さんは、完全に固まっていた、私はどんどんと近づく。ダイニングの椅子に腰掛けている柏田さんの膝に尻を乗せ、両手を真っ青になっている首の後ろに廻す。顔をゆっくりと近づける。
 ごくんと、唾を飲み込む音。波打つ喉。
「あんっ!」
 尻たぶに、固いものを感じて、私はワザと甘えた声をあげて見せた。柏田さんの勃起だ。柏田さんの頬がさぁと赤らんでいく。
「うれしいわ……」
「うう……」
 唇を寄せ、身体をべったりとすり寄せた。柏田さんの手が、おずおずと私の乳房に伸びる。
「んんん……っ!」
 最初は遠慮がちに、やがて大胆に。ブラジャーの中に手を入れ、乳房を揉みしだいてゆく。柏田さんの唇が私の首筋を伝い、肩を優しく噛む。
「ああ、あ。あ……っっ!」
 こんな風に愛撫されるのは、久しぶりだ。嫉妬から誘ったのだったが、私は本気で燃えはじめていた。スイッチが入ったかのように、下半身が緩み、いやらしい液が淫肉を湿らせ、溢れる。
「あ、あ……」
 大胆にまたがった私の肌を、柏田さんは座位のままで舐る。ブラジャーははずしてしまった。柏田さんは私の乳房を、赤ん坊のようにしゃぶり、弄り廻す。
「ア、あン、クぅぅぅ……」
 子作りばかりに気を取られ、忘れていた快楽のためのセックスの記憶が、急速に私の中に蘇る。身体に触れられるのが、こんなにも気持ち良かったなんて!
「立って……」
 柏田さんに促され、私はよろよろと立ち上がる。いけない……快感で脚が痺れて上手く立てない。
「あ……っ」
 座ったままの柏田さんの手が、私の下着の中に入る。指が、粘膜の中へ沈んでゆく。
「ああ、ああああ……」
 私は手を後ろに回し、テーブルで身体を支える。指は器用に、そしてリズミカルに蠢き、私を堕としてゆく。 
「私、もう、もうダメェ……」
 息絶え絶えに、私は腰を折って柏田さんの肩に頭をもたれ、ねだった。
「ねえ、入れて。ガマンできない」
「自分もですよ」
 柏田さんはそう言うと立ち上がり、服を脱いだ。ああ、なんて立派なペニス。ペニスなんて私の子宮に精子を運ぶためだけのものだと思っていたけど、そうじゃないのよね――。
 私は柏田さんの手を引き、リビングのソファへ案内した。柏田さんは私をソファに押し倒し、内腿をさする。私のあそこは準備万端だ。
「きて……」
 固く熱い塊が、ぐいぐいと私の淫肉を広げ、沈み込んでゆく。
「ああ、ああああ……っ!」
 ものすごい、快感。柏田さんも、奥さんが妊娠、里帰りでずっとしていなかったのだろう。初めからハイペースな激しい腰使いで、私を狂わせる。
「あん、アアンンン!」
 気持ちいい。たまらない。身体が痺れる。全身が火照り、頭がくらくらする。
「うう……」
 やがて柏田さんが、短いうなり声を上げ、腰を引こうとした。
「いや、一緒に!」
 私はぐいと柏田さんの腰を抱きしめた。膣壁を刺激する降り注ぐほとばしりの中で、果てていった。 
 瞬間、息を呑んだ。
 それは、彼の方も同じだったらしい。元から大きな瞳が、私を認めたとたん、一回りくらい、大きくなっていた。
 けれども私たちはお互い、声を掛け合うことはしなかった。……いいえ。しなかったのではない。出来なかったのだ。
 私も彼も、もう大人だ。高校の時の同級生を目の前で見つけたからといって、きゃあきゃあ騒ぐような子供ではない。それに、状況もそれを許さなかった。
 私と彼が、お互いを旧知の人間だと認め合ったそこは、小学校の教室だった。
 私は、新一年生の息子を持つ母。そして彼は……息子の担任として、その場に現れたのだから。
 ****************
 私はいわゆる「ヤンママ」だ。十代で出産し、高校卒業を待ってそのまま結婚した。子供はひとり。今年新一年生になる息子だけだ。
 大学生だった夫は、結婚を機に大学を中退し、知り合いの会社で勤めをはじめた。両親の反対を押し切っての結婚だったから、金銭的に辛くても、実家を頼ることが出来ず、私と夫は二人三脚で頑張ってきた。
 幸い息子は健康で、健やかに育ってくれた。大人しく、手のかからないいい子で、私はそれが自慢だった。
 だけど、私はいつも孤独だった。
 子供を連れて出るいつもの公園でも、幼稚園でも、私は最年少の「ママ」だ。高齢出産が増えているからだろうか。まわりのママさんは私より一回り以上年上も少なくない。そんなママさんは経済的にも豊かだから、やれスイミングだ、やれピアノだと、うちの経済力ではとても通わせられないスクールの話に夢中だったり、私がぼんやりとしか分からない古いテレビ番組の思い出話をしたり。
 あからさまに私を拒絶したりすることは一切なく、みんなとても親切でいい人だったけど、私はいつも疎外感を感じていた。
 ふと見ると、私と同じ歳の女性が、今が花の時期よとばかりに綺麗に着飾り、積極的に遊んだり、バリバリ仕事をしたりしている。高校時代の友人とも、すっかり疎遠になってしまった。早々に主婦になった私と、彼女たちとでは遊べる時間帯も、話題も合わない。
 十代で妊娠したことを後悔し、思わず涙をこぼしたこともある。そんな私を息子がじっと私を見ていた。やりきれない想いが重なるばかりだった。
 息子が小学生になったから、働きにでも出ようかと、私は就職活動をはじめた。
 正社員として働くのはとても難しかったから、パートを捜していた。
 4月の終わり。とても暖かな日のことだった。
「あ……」
「あら」
 子供を夫に預け、パートの面接に出た帰り。
 面接官の感触が悪く、またダメだったかなとため息をついていた時に、見知った顔を見つけたのだ。
 息子の担任教師――私の高校生時代の同級生、松前君だった。
「どうも……えーと」
「息子がいつもお世話になっています」 私が深々と頭を下げると、
「いえいえ。こちらこそ」
 と、彼は少し笑った。
 お互い、しばらく顔を見つめ合い、気持ち悪いくらいに笑っていた。個人的に話をしたのは、初めてだ。来月の個人面談ではイヤでも顔を合わせるだろうとは思っていたが、まさか道でばったり会うなんて。
「今更確認するのもなんなんだけど、君、旧姓山本さんだよね? えーと、2組だった山本志織?」
 確認もなにも、彼は確信していたのだろう。何たって、すっかりタメ口だ。
「そうよ、松前くん。ビックリしたわよ。まさか息子の担任が松前くんだなんて」
「ばか! 俺の方が驚きだよ。そりゃあさ、教師やってりゃあいつかは知った奴の子供を受け持つかもしれないとは思っていたけどさ、まさかこんなに早くこんな状況になるなんてさ。山本が妊娠したとき、クラス中大騒ぎだったもんなー。あの時の子が和樹君?」
「そうよ。大きくなったでしょう。あの子が2組を大混乱に陥れた張本人よ」
 入学式の時にははじめてクラスを受け持ちますと、ガチンガチンに緊張し、時折おかしな敬語を使って父母たちの失笑を買っていた松前君だったが、今はリラックスして話していた。私はこんな風に友達同士の会話をするのは久しぶりだったから、なんだか、ウキウキとしていた。
「あのさ、立ち話はちょっとまずいんだよね。一応、教師だからさ。学外で特定の生徒の保護者と親しくしてると、なんだかんだウルサイ連中もいるんだよ。俺のアパートさ、すぐ近くなんだ。ひとり暮らしで汚いけど、良かったら寄ってかない?」
「え?」
 ドキンとした。
 ひとり暮らしの男性の部屋に入るという状況が、とっさに理解できなかったのだ。けれど松前君はニコニコと屈託なく笑っている。
 ああそうか。私は子持ちの主婦だ――普通の若い女性というわけではない。しかも相手は、息子の担任教師だ。
「あ、ごめん。やっぱりやばいか。いや、懐かしくってさ。気づいたときから、気になってたんだよ、山本のこと。ああ、今は酒井さんか」
 私が躊躇していたのを見て、松前君は慌てたようにそう言った。
「ごめんごめん。やっぱりまずいよな」
「ううん。行きましょ。どこなの? それに、山本でいいわよ」
「いい? じゃあこっち。ついてきて」
 松前君は、私が子持ちの主婦ではなく、たとえばOLだったとしたら、こんなに気軽に部屋へ誘っただろうか――? ほんの少し寂しさを憶えた。
 ****************
「だいたいさぁ、こっちは一応プロなんだよ。それなのに父兄は、俺が自分より歳下で子供がいないってだけで、若い奴に子供のなにが分かるんだとか、ちゃんと教えているのかだとか、ああだこうだ口出してきてさぁ……」
 彼の部屋は案外と片づいていた。ひとり暮らしの男性の部屋なんて、付き合っていたころの夫の部屋しか知らないから分からないけど、こんなものだと思う。
 部屋は2つ。片方は寝室なのだろう。扉を閉めっぱなしにしているから、中は見えない。私は、居間に通された。すぐ脇にキッチンスペース。板張りの居間には、カーペットが敷いてあり、小さなガラスのテーブルと大きめのソファ、そしてテレビとデスクトップパソコンが置いてある。あとは本棚だ。
 本棚には、教育関係の本が並んでいる。何冊かは、背がすり切れていた。彼は、思っていたより、真面目な教育者なのかもしれない。 
「それに最近はあれだぜ? どっかのバカどもが子供相手に変な事件起こすからさ、若くて独身の男性教師だってだけで、神経質になる親なんかもいてさ」
「大変ねぇ」
 最初は、出されたインスタントコーヒーを前に、お互いの近況なんかを報告し合っていた。けれど途中から、松前君は愚痴をこぼしはじめていた。
 おそらく……溜まっていたのだろう。小学校には赴任したばかりで、愚痴をこぼせる同僚はまだいないようだった。周りは厳しい目を向ける父兄たちと、彼を品定めしている学校関係者ばかりで、息が詰まっていたのだろうと容易に想像できた。
「こっちは、最初から教師志望だったんだよ。それなのに、よそで就職できなかったから教師になったんだろうなんて勘ぐるやつまでいてさ」
「今の小学生のお母さんお父さんって、私たちより一回りは年上だったりするじゃない。情報もそれだけ蓄積してるからさ、その分疑心暗鬼になりやすいのよ。それに、私たちくらいの歳でバブルを体験した世代でしょ?」
「お、山本分かってるじゃん」
「だって、私も子供関係でおつきあいする人たち、みんな年上で……」
 彼のペースにすっかりはまってしまった私は、自分の溜まっていた愚痴も、ぽつぽつとこぼしはじめていた。
 私たちはお互い、立場も環境も違ったけど、孤独であることに間違いはないようだった。
「俺さ」
 唐突に、松前君がつぶやいた。
「山本が妊娠したって噂聞いたとき、すごいショックだったよ」
「みんなショック受けてたみたいね」
「違う、そんなんじゃないよ。俺、山本のこと、ちょっとイイなって思ってたんだ。だから……」
 私たちの間に、微妙な空気が流れた。どちらかが、あのころが懐かしいわね、なんて笑えば、また賑やかに会話を進められたかもしれない。
 けれど私も彼も、そうしなかった。
 私たちはお互い孤独で、そんな中、思春期の混乱を一緒に乗り越えた懐かしい顔を見つけ、寄り添い合いたかったのだろう。依存? そうかもしれない。
 私たちは、どちらともなく、唇を寄せ合っていた。
「ああ……」
 私は夫がはじめての人で……そして最後の人だと思っていた。私は他の男性を知らない。
「山本。舌、出して……」
 彼の唇は柔らかくて優しくて、夫とは全然違った。私がほんの少し伸ばした舌を彼は唇で優しく挟み、強く吸った。
「ん、んんんん……っ」
 こんなキスを、私は知らない。身体の力が抜ける。彼は私の側に寄り添い、舌を愛撫しながら、私の肩を支えてくれた。
 私はそのままソファに押し倒される。彼の唇は私の首筋へと移動し、私は甘いため息をこぼした。
 ああ。こんな風に優しくされるのは、何年ぶりだろう。夫も、始めは優しかった。けれども今は、こんなに優しく柔らかく私を抱くことなんてしない。
 私の服を脱がしながら、唇を首筋から胸元へ移動させる彼の頭を私は強く抱きしめた。
「あんっ」
 彼の熱い手が直に乳房を覆い、揉みしだく。唇が乳首を吸いあげる。
 甘い快楽が身体中を走り抜け、下半身がじんと緩んだ。足にあたる松前君の股間が、厚手のジーンズ越しでもはっきり分かるくらいに、固く膨張しているのを感じた。
 欲しい――。たまらなく、彼が欲しかった。私は思いがけないほどに乱れた気分で高ぶっていた。
「これ……」
 伸ばした手で、彼の股間に触れる。
「うう」
 私の乳房から口を離し、松前君は短く呻いた。
「欲しい」
「色っぽいこと言うなよ。たまんない」
 私は手で強く、彼のいきり勃った股間をジーンズ越しにさすりあげた。  
 ****************
 夫と子供以外の男性に裸で抱きしめられたのは、初めてだった。
 彼の身体は大きくて、温かかった。肌を寄せ合っていると、体温が直に伝わる。重ねた身体に、彼の心音が響く。抱き合っているだけでこんなにも心地よさにうっとりとするものだったろうか? こんなにも柔らかい気持ちになったのは、本当に久しぶりだ。
「ねえ、いいでしょ?」
「え?」
 私は彼をソファに寝かせて、彼の下半身に自分の身体をずらした。
「ちょっと、そんなコトしなくていいんだよ!」
「私がしたいのよ」
 私は、自分でも驚くくらい、大胆になっていた。快楽だけに身を任せて行動することがこんなにも楽しいなんて。
 私は彼の赤黒い勃起に手を添え、軽く握りしめた。手の中でそれはぴくんぴくんと脈打ち、手のひらをくすぐる。
 私はゆっくりと唇を開け、口内に肉棒を咥え込み、舌を絡めた。
「う、うう」
 彼のそれは熱くて、固くて。私の口唇内で何度も痙攣のように震えた。大きなそれは、とても口の中へ入りきらない。唇と膨張した肉との間から唾液がこぼれ、彼の茂みを濡らす。
 私の脚の間も、自覚できるくらいにびしょ濡れだ。恥ずかしいくらいに……まるで、何年も男に構って貰っていない女のように、私は飢えていた。
「あう、うう、うううう」
 私は、夢中で彼のペニスを咥え、しゃぶり続けていた。やがて彼が私の頭を抱き、もういいよと目で合図するまで。
「挿れるよ?」
 私を抱き、彼は優しくソファに横たえる。そして唾液まみれになった唇を吸いながら、正常位の格好で脚の間に腰を据えた。
「ああっ!」
 鋭い快感が、全身を貫く。彼も飢えていたのだろうか。まるでセックスを憶えたばかりの若者のように、激しく肉をぶつける。
 彼の……私を貫いているのが、息子の担任教師の肉棒だということにはたと気づき、四肢が思いがけないほどに熱く震えた。
「あ……、松前センセ……」
 私の口からこぼれたその言葉に、彼もまた反応する。私の膣内で肉棒がいっそう膨張し、肉壁を擦りあげる。
「ああ、あああ。先生、先生!」
「山本……うっ、ううう」
 イッたのは同時だった。いや、私の方が少し早かったかもしれない。抱き合った松前君の頭髪に一筋の白いものを私は見つけ、たまらなく愛おしかった。
      
「ひとりなの? ここら物騒だからさ、送ってあげるよ」
「タクシーで帰りますから」
「金使うことないじゃん。第一ここ、ほとんどタクシー来ないぜ。大丈夫だよ、きっちり送ってやるから。家どこ?」
 3人組のしつこい男達を無視し、私は再び道路に目をやった。
 時間は午前二時を廻っている。まさか、終電で寝過ごすなんて……。もう二五歳になるというのに、私ったらなに若い女の子のようなことやっているのだろう?
 目覚めて慌てて飛び降りたそこは、本来なら降りなければいけない駅から、かなり離れた田舎の、閑散とした駅だった。
 タクシー代は持っていないが、カードで支払えばいい。何より、タクシー以外にここから家まで帰る術はない。
 ところが、この駅のタクシー乗り場には、なかなかタクシーが来ない。慌てて降りた私がバカだった。落ち着いて、急行が停車するような駅で降りれば良かったのだ。
 誰もいないタクシー乗り場で困っている私に声をかけてきた若い男三人は、どうやら同じ電車に乗っていたようだった。
 三人とも十代後半から二十代前半といったところだろうか。ひとりは赤いキャップを被り、ひとりはやたら背が高く痩せている。そしてもうひとりは、少し強面だ。だらんとしたズボンのポケットに手を突っ込み、なにかをじゃらじゃらさせている。
 彼らは私が明らかに寝過ごし、慌てて電車を飛び降りたのを見ていたのだろう。そして、ついてきたのだ。気持ちが悪い。身の危険を感じた。
 駅の周りに人気はなく、道路の反対側にぽつんとコンビニの明かりが見えるくらいだ。
「なあ、送るって!」
 赤キャップの男が、私の腕を掴んだ。
「やめてください!」
 私は必死で振り払い、コンビニに向けて足を速めた。店内で一晩中過ごしてもいい。電話もあるだろう。そうしたらタクシーを呼べる。
「待てよ!」
 男の声を無視し、道路に飛び出す。左手にライトが見えた。タクシーだ!
「止まって!」
 私は道路の真ん中で手を挙げた。私の身体がヘッドライトで照らされる。驚いたような運転手と一瞬目があった。
 急ブレーキの音。
「お姉さん、危ないよ」
 気の弱そうな中年の運転手が、窓から顔を出す。ドアが開く。
「お願い、乗せて。急いで出して」
 閉めようとしたドアが、強い力で押さえられた。どんと背を押され、タクシーに押し込められる。
「ちょっと、君たち……」
 運転手の声。
「出せよ。俺たちの言うこと聞くんだ」
 無理矢理乗り込んだ男達が、運転手を脅していた。
「いやだ、出して! ……ひっ!」
 助手席に乗り込んだ強面男が、サバイバルナイフを取りだし、運転手に突きつけている。
「早く出せよ。この道まっすぐ行って……山道があるだろ、そこ走れ」
 運転手は無言で、車をスタートさせた。

「いやぁ、やめてください!」
「ほらほら、あんまり暴れると運転手さんの気が散って事故おこしちゃうぜ。みろよ、ガードレール超えると崖だぜ? 死になくないだろう?」
 右に背の高い男、左には赤キャップの男がいる。私は後部座席でふたりの男に挟まれていた。
 狭く、暗い山道にのったタクシーは、悪路でがたがたと揺れる。気の弱そうな運転手が、ぶつぶつと助手席の強面に何か言っていたが、そのたびに
「うるせえな、変なこと考えたらただじゃおかないぞ!」
 と、一喝されていた。
 私を両面から囲んだ男達は、私の身体をいいように弄っていた。ブラウスの前は開けられ、ブラジャーはずらされている。スカートはたくし上げられ、ストッキングはビリビリだ。
「オッパイ小さいな。上げ底ってやつか、これ」
「でも、固さは丁度よくね?」
 赤キャップが私を膝に乗せ、背後から乳房を痛いくらいに揉みしだく。時折乳首を指で潰し、引っ張りあげる。
「いやぁ、やめてぇっ! 痛い、いたいぃぃぃ!」
 背の高い男は私の太腿をさすりながら、下着を剥ぎ取ろうとする。
「いや、イヤアぁっ!」
 振りあげた脚が、背の高い男の顔面に当たる。
「こいつ、ふざけやがって!」
 平手が私の内腿を叩く。強い破裂音に、私の叫びが重なった。
 私の必死の抵抗は、男達の加虐の欲望に油を注いでいるだけだったらしい。赤キャップはますます強く私の乳房をこね回し、背の高い男は持っていたナイフで私の下着のわきを切り裂いた。
「ああ……」
 口中に、裂かれた私の下着が詰め込まれた。吐きそうだ。喉の奥が苦しくてむせかえる。
 尻のあたりに、ゴツゴツしたモノを感じた。赤キャップの勃起だと気付くまでに、少し時間がかかった。あまりにも固く、大きかったから……。
「いい加減観念しろよ」
 下着を切り裂いたナイフが、私の顔面に添えられた。
「おっと……」
 車体の揺れで、一瞬ナイフが頬をかすめる。恐怖で身体が固まる。
「あぶねえなぁ」
 バックミラー越しに、運転手と目が合った。
 服を剥かれ、惨めな格好で涙を流している自分を、運転手が哀れむような表情で見ていた。けれど私はその瞳の中に、好奇心の光が宿っているのも見逃さなかった。
 悔しくてたまらなかった。
「次、広い道に出るから。……そこをまっすぐ。次、橋……渡って。そこの赤信号は無視していい、止めるな。左の未舗装路に入れ。狭いから気をつけろよ。ハイライトにしていけ。そのまま山ン中へ入れ」
 助手席の強面は、淡々と運転手に指示を出していた。後部座席で行われていることなどにはまるで興味がないといった風だ。
 この男達、慣れてるんだ――。
「な、なんでも言うこと聞くから、お願い、殺さないで……」
 下着を吐き出し、私は震える声をあげた。背の高い男は一瞬きょとんとした顔をし、やがて声をあげて笑った。
「なんでも言うこと聞くから、だって? 逆らうことも出来ないのにか!」
「ああっっ!」
 男の平手が、私の頬を直撃した。頭の芯まで痺れる。
「許して……」
「写真、撮っておけよ」
 助手席の男に促され、背の高い男は私に携帯電話を向けた。
 赤キャップの男が背けた私の顔を正面に向けさせ、無理矢理に脚を開かせた。
「ハイ、チーズ」
 電子音と共にストロボがたかれ、あられもない私の姿がデータ化されていく。
「殺しはしないが、変なことをしようとしたら、ネットに写真ばらまくからな?ええと……」
「いや、やめて!」
 男の手が、私の鞄の中を漁る。
「免許書発見。木下……和美ちゃんね」
 住所も知られてしまった。もう、お終いだ。

 突き飛ばされるようにして、私は草むらに転げ落ちた。服ははだかれ、身体を覆っているのは、ビリビリに破れたまままとわりついているパンティーストッキングだけだった。
 タクシーは人気も明かりもない山の中で駐められ、運転手もおろされた。
 真っ暗な中、タクシーのヘッドライトだけがまっすぐに伸びている。
 無数の羽虫がライトの中に浮かぶ。
「さっさとやっちまおうぜ」
 車内ですでに股間を起立させていた赤キャップが、ズボンに手をかけイチモツを取り出す。
「その前に、こっち」
 冷静な強面がタクシー運転手の両手をバンダナのようなもので後ろ手に縛り上げ、車のわきに転がした。
「おまえ、観客がいないと、燃えないんだよな」
 背の高い男がげらげら笑う。運転手の怯えた表情が、ライトに照らされる。私と目が合うと、そっと視線をそらす。
「ほら、しゃぶれよ」
「んんん……」
 鞄を取られ、服も靴も取られ。こんな山の中からひとりで逃げ出すことなど出来ない。私は彼らのいいなりになるしかなかった。
 髪の毛を強く掴んで私は上半身をおこされた。地面にべったりと付いた尻がひんやりして気持ちが悪い。けれどそんなことに構っていられる状態ではなかった。
 口内にいきり勃った生臭い肉棒がねじ込まれた。こみあげる嘔吐を押さえきれない。ゲエゲエ言いながら、私は必死で口を動かした。
「ヘタクソだなぁ。それとも俺のがでかすぎるのかな?」  
 赤キャップの軽口に、背の高い男がげらげら笑う。
「俺からヤッちゃっていいんだろ?」
 赤キャップの言葉に、
「お前、さんざん楽しんでるじゃねえか、俺からだよ」
 と、背の高い男がズボンをおろし、赤キャップのペニスで口唇を犯されているままの私に近づくと、尻たぶを掴み、ぐいと持ち上げた。
「んぐううぅぅ」
 身体のバランスが崩れ、赤キャップの切っ先が喉の奥を強く突く。
「うううう……」
 堪えきれず、四つんばいの格好で、唾液と共に吐き出す。
「なんだよだらしない」
赤キャップが舌打ちしながら私の顎を強く掴み、再び勃起をねじ込んだ。
 それと同時に尻たぶが割られ、背後に立つ背の高い男の肉棒が、秘肉にずぶずぶと突き刺されていった。
「くううぅぅっ!」
 激しい絶望感と恐怖。腰から下が麻痺したような感覚で、まともに身体を支えているのが難しい。
 男達はそんなことお構いなしに、ガンガン私を責め立てる。下半身を激しく突き動かされるたびに、身体が左右に動き、喉の奥を男根が貫く。
 膝が地べたに擦れて痛い。砂利が絡んでいるようだ。
「ん、んんくぅぅ……」
 やがて、私の喉を犯していた男のペニスがどくどくと脈打ちながら生温かな白濁を吐き出し、ついで、背の高い男が私の中に欲望をぶちまけた。
「あううう……」
 口と下腹部からザーメンを垂れ流した私は、そのまま地面に突っ伏した。男達は何か言いながら笑いあっていた。うつろな目を運転手に向ける。運転手が目をそらす。
 こいつ、きっとずっとニヤニヤしながら見ていたのだろうかと思うと、吐き気がした。だってこいつは、逃げだそうと思えば、逃げ出せるのではないの? 必死で走って山を下りれば、電話くらいあるでしょう。
 私が惨めに陵辱され、ボロボロになっていくのを、怯えているフリして悦んで見ていたのかもしれない――そう思うと、無性に腹が立った。
「おい、俺が使うから。ちゃんと写真撮っておけ」
 今まで黙っていた強面が、つかつかと歩み寄り、地べたに転がっていた私の髪をぐいと掴んだ。
「ううう……」
 もう、痛いという叫びも出ない。
 強面は私の身体を、ボンネットに押しつける。押しつけられた乳房に、熱気が伝わる。身体に残る白濁の匂いが熱にあおられ、鼻をついた。
 ぐいと尻肉が割られた。太腿をザーメンが流れ出る。
 さんざん嬲られた秘肉がヒクヒクと小さな痙攣を繰り返す。
「ああぅ」
 強面の指が秘裂を探り、汗と愛液とザーメンの入り交じった粘着液を絡め取る。ざらつくものは、地べたの土か、細かい砂利かもしれない。
 男はそれを、私の……私のアナルに塗りつけた。
「ひぃっ!」
 脳内で破裂音が響いた気がした。男は私の腰を掴み、ボンネットに押さえつけたまま、張りきった肉棒の切っ先をアナルに添えた。そして一気に……
「アアアアッッ!」
 携帯でたかれるフラッシュの中、私の絶叫が闇を裂いた。
「あああ、アアアアッッ!」
 避けるような痛みが全身を貫く。肉棒は私の直腸を割り、奥へ奥へとねじ込まれていく。
「ああ……ああ……」
 気が遠くなりそうだ。誰か、誰か助けてよ……。
「また尻かよ。お前も好きだな」
「お前らがスペルマぶちまけたところなんて、汚くて挿入られねえよ」
「ウンコは平気なのかよ!」
 すぐ近くでされている会話だというのに、なぜか、遙か遠くに聞こえる。
 ふと、運転手に目を向けた。半開きの口から、熱い息がこぼれているようだ。
 運転手のズボンが、無様に盛りあがっていた。 
 
 中古住宅に引っ越してきて3ヶ月。昼間ずっと家にいる専業主婦の私は、時折感じる視線に、いつも悩まされていた。
 ハッキリとした確証があるわけではなかった。だけど、誰かに見られているという感覚がつきまとうのだ。
「中古なんでしょ? 前の住人はどうして引っ越したのよ?」
 学生時代からの友人に電話でそのことを話すと、そんな風に言われた。友人はどうやら、何か幽霊のようなものを考えているようだった。
「いやだヤメテよ、気持ち悪い」
「そこの販売価格、妥当だったぁ?」
「妙に安くなかったかって事? 普通よりは安かったけど、ここ古いから……」
「あはは。近所に変死者の噂は?」
「ないわよ!」
 友人に話していると、確証のない『見られている』という感覚がなんだか自分でもばかばかしくなって、落ち着く。
 私たち夫婦の引っ越してきた一角は古い住宅が密集しているところで、私たちのように若い夫婦というのは珍しい。
 いても、両親と同居で二世帯という感じで、若夫婦だけの世帯というのはない。
 この家の築年数は三五年以上。この家で子育てをし、子を嫁に出し、自分たちの定年を迎え、元々住んでいた故郷へ引っ越した住人が売りに出したのだ。
 本当は取り壊して更地にし、土地を売りに出したかったそうなのだが、二世帯住宅になっている隣家の子世帯の方に受験生がおり、家を壊したり立て直したりで騒音を出すことを、近所づきあいを何よりも大切にしていた前の住人は遠慮したのだと聞いていた。

「そう言えば俺も、たまに感じるぞ」
 恐る恐る、時折感じる視線について夫に話したところ、意外なことに夫も私の話に同意した。
「本当? どういうとき?」
「普通に出勤の時とか、帰宅時だけど」
「うそー。やだわ、こわい」
「別に、霊とかじゃないと思うぞ。隣だよ。隣の二階部屋」
「え?」
「だから、隣の浪人生だよ」
「ああ、和夫くんだっけ?」
 和夫というのは、二世帯住宅になっている隣家の息子夫婦の子どもで、大学受験生だ。前の住人が遠慮して家の取り壊し工事を諦めたという原因であり、当時も受験生で今も受験生。つまり浪人中だ。
「和夫くんの部屋、うちの方に向いている窓に面して机があるのがこっちからも分かるだろ? こっちからそれが見えるって事は、向こうからもこっちが見えるんだよ。別に意識しなくても、机に向かえばこっちに目が向くって事。それが、なんとなく見られている感じに思えるだけだよ」
 そう言われてみれば、視線を感じるのは、私が特定の場所にいるときだけだ。庭いじりをしているときや、隣家に対峙している部屋にいるときぐらい……。
「町内会の集会で近所の人に聞いたんだけど、和夫くん、気の毒だってさ。お隣、奥さんがやたら厳しくてスパルタで、さらに見栄っ張りでさ、和夫くんが福祉の専門学校に行きたがっていたのに、そんなの許しませンって、無理矢理大学を受験させているそうだよ。和夫くんは母親に頭が上がらないんだって。基本的に大学進学する気はないのに、机に向かわされてるんだよ。たまに目がこっち向くぐらい許してやれよ」
「でも……」
「ま、別に実害はないんだし、いいじゃないか。向こうもワザとのぞいているんじゃないんだし、気にするなよ」
 気にするなと言われても、出社時、帰宅時に視線を感じるだけの夫と、四六時中家にいる私ではわけが違うではないか。
 翌日、私は目隠し目的の模様入りガラスシートを購入し、隣家に対峙している全部の部屋の窓に貼り付けた。
 張りながら思う。たしかに、隣家の二階……和夫くんの部屋があると思われる場所からは、カーテンを開けていればこの家の中は丸見えになってしまう。
 一階のその部屋はリビングになっていて、趣味のガーデニングでキレイに整えた庭へ出られる大きな窓が気に入っていたが、視線を感じるよりマシだ。正直、庭に出ることも、なんだか怖くなっていたくらいだったし。
 あまり深く考えていなかったが、こういう事もあるんだなぁと思いながら、私は黙々と作業を続けた。 

「わはは。万年浪人のストレス解消に覗かれていたわけなのね」 
 視線の主を霊だと決めつけていた友人は、電話口で私の話に豪快な笑い声を立てた。
「だからぁ、ワザと覗いていたわけじゃなくて、机に向かうとこっちが見えているだけみたいで」
「えー、そんなのどうして分かるの? こっちからも、向こうが見えるの」
「それは……」
 正直に言うと、ほとんど見えない。隣家の方が高い位置にあり、角度の関係だろう。こちらからは見上げる形になり、向こうは見下げる形になる。机があり、机の上にパソコンのモニターがあるのはかろうじて見えるが、その部屋の主を確認することは出来ないのだ。
「望遠鏡とかで、覗いちゃってるかもよ。私があなただったら、わざと見せつけるようにエッチな下着姿で歩き回ったりしちゃうけどなー」
「やだわ、誘惑しろって?」
「そうそう。オナニーしちゃったり」
「アダルトビデオじゃないんだから!」
 友人の妄想には付き合いきれない。早々に電話を切り、シートを貼った窓を見る。光は入るが、外はほとんど見えない。向こうからも見えないのだ。
 夫には、全面シートでわざわざ自慢の庭を見えなくしてどうするんだとぶつぶつ言われたけど、精神衛生上、こっちの方がずっとマシだ。
「あら?」
 ばしゃ、ばしゃと、水滴がガラスを打っていた。
 いけない、雨だ。
 今日は久しぶりに天気がよいからと、私は庭に傘を干していたのだ。
 私はがらっと窓を開けた。
「きゃぁっ!」
 目の前に、私の干した傘を畳んで手にした、若い男が――隣家の浪人生、和夫が立っていた。

「なにするんです」
「わざとらしいんだよ、こんなシート貼って! まるで、僕があなたの家を覗いてるって、近所にアピールしてるみたいじゃないか」
 和夫はそう言いながら真っ赤な目で、ずかずかと私の家に入り込み、後ろ手で窓を閉めた。外からは、この部屋の状態はもう見えない。
「ちょっと、出ていって下さい!」
「かあさんにも言われたんだ。隣がうちに向いてる窓全部にシート貼ったけど、まさかお前覗いていたのかとかなんとかさ。怒られたんだぞ? お前のせいだ」
 ひどい言いがかりだ。
 だが、自分の家に勝手に上がりこまれたことが恐ろしくて、私は反論することも出来なかった。私は後ずさり、和夫はドンドン近づく。距離をつめてくる。
 どんと、背が壁にぶつかった。助けを呼ばなければ。携帯電話はどこ? やだ、あんな遠く!
「助けを呼ぼうったって、そうはいかないんだからな」
「ひぃっ!」
 和夫の両手が、私の肩を掴んだ。私はショックで腰を抜かしたようになり、押さえつけられるようにその場にしゃがみ込んだ。
 ふと気付いた。肩に置かれた和夫の手は、小刻みに震えている。
 良く聞けば声も、かなりうわずっていた。和夫にしてみれば、どうやら勇気を振り絞った行動のようだ。
 夫の言っていた言葉が脳裏に蘇る。
 もしかしてこの和夫というのは、確かに気の毒な青年なのかもしれない。ストレスが貯まりきっていたのだろう。そしておそらく実際に、家を……私を覗いていたんだろうと思われた。和夫は、私がそのことに気付いていたとは、露も思っていなかったのだろう。
 けれど、図星を突かれるような行動を私がしたこと、両親に問いただされたことでショックを受けてこんな行動に出たのかもしれない。
 気の毒だとは思う。だが、不法侵入だ。
「け、警察に連絡しますよ!」
「隣の家の人間を通報するのか? そ、そんなことしたら、近所で恥をかくのは奥さんの方ですよ」
「知らないわ。いざとなったら引っ越すもの。それよりあなたの方が大変なんじゃない? あなたのお母様はお厳しいんでしょう? 息子が犯罪なんて……」
 肩を掴む手の震えが、ぴたっと収まった。顔を見る。和夫の顔色が真っ青になっている。人間て本当に顔が真っ青になることがあるんだと、こんな状況だというのに、私は妙に感心してしまった。青い顔に、目だけが真っ赤に燃えあがる。怒りの色だ。
 しまった。和夫に母親の話は、厳禁だったか! 後悔したが、時既に遅し。
「きゃぁぁぁっ!」
 和夫は私を押し倒し、覆い被さった。そしてシャツを捲りあげ、ブラジャーをたくし上げると、私の乳房を露出させた。
「かあさんは関係ないだろ! 困るのは本当にあんたのほうなんだからな!」
 スカートを捲りあげ、私の下着に手をかけた。
「やめて、やめなさいよ! お母さんに言いつけるわよ! いいの? お母さんに言いつけても? 怒られるわよ、家を追い出されちゃうかもしれないわよ?」
 逆に禁句を言い続けて意気消沈させようとしたのだが、作戦失敗。というかかなりの逆効果だったようだ。
 和夫はますます逆上し、私の下着を乱暴に取り上げた。その弾みで私は壁に頭を打ち、和夫は自分の行動に興奮したのか、目を血走らせて、私に襲いかかった。

「くっ! んんんんん……」
 私は口内にタオルを詰められ、ガムテープで口を塞がれた。居間のどこにガムテープがあるかを和夫が把握していたことが恐ろしい。乱れた恰好のまま私はソファに転がされ、両手も後ろでガムテープを巻かれた。
 和夫はハアハアと息を荒げ、しばらく私の乳房ばかりを弄っていた。それにも飽きたのか、あとは肩を上下させ、私をただ見ていた。最初は、してやったぜ、という満足げな表情だったが、なんだか見ていたら、だんだん困ったような表情を見せ始めた。
 怒りにまかせて勢いでここまでやっちゃったけど、さあこのあとどうしよう?
 どうも、そんなところなんじゃないかと思えた。
 要するにこの和夫は、マザコンでしかも幼稚なんだろう。ひょっとすると、童貞なのかもしれない。
「ん、んんんっ!」
 ワザと下着姿で歩き回り、オナニーを見せつけてやる、といった友人の言葉が頭をよぎった。なんだか今は、その友人の気持ちが分かったような気がした。
 私は苦しそうに身悶える振りをしながら、いやらしく脚を拡げ、誘うように腰を突き出して見せた。
 案の定、和夫は目を丸くして私に注目した。息が更に荒くなっているのが分かった。ジーンズの上からハッキリと分かるくらい、股間も膨張している。私の淫らな姿に興奮している和夫を見て、私も背徳感を伴う高揚を覚えた。私は誘うように腰をくねらせ続けた。正直、レイプするつもりだったらさっさとして欲しい。こんな屈辱的な恰好のままでボーっとされるのは辛い。
「畜生」
 ようやく、和夫が動いた。
 わざとらしいくらい大げさに服を脱ぎ、ズボンと下着を取った。意外なほど巨大な勃起が顔を出す。
「犯してやるからな!」
 私の腿に手をかけ、左右に開いた。
「んんんーっ」
 和夫は、私の秘所を凝視していた。まるで、初めて見るかのようにまじまじと。もしかして和夫は本当に童貞なのかもしれない。童貞ではないとしても、それほど経験がないか……。
 私が腰を浮かすと、はっとしたように和夫は自分のペニスを握り、私の脚の間に添えた。
「うわ、本当に濡れるんだ」
 そんなことを言う。私は少し恥ずかしくなり顔を赤らめたが、和夫は私の顔なんて見てはいなかった。
 亀頭で濡れた割れ目を探り、穴を捜しているようだった。ようやく、スルッといくところがあったのだろう。肉棒が一気にねじ込まれた。
「くう……ん、んんんんっ!」
 口を塞がれているのがじれったかった。
 和夫は息を弾ませながら、ひたすらに、無理矢理に、激しく、乱暴に、私の肉を突きまくった。
「すごい、すごい気持ちいい……自分でやるのとは大違いだ……」
 顔をゆがませ、ただただ、突いた。そんなセックスが新鮮で、何とも言えない快感が私を上気させ、高ぶらせた。不本意ながらも私は深く感じ入り、あっという間に和夫が私の中に精をこぼしたときは、これで終わりかと少しガッカリしたのだった。
「はぁはぁ……」
 けれど若い和夫の回復力はすごかった。「んんっっっ!」
 和夫は何度も何度も……しかも、勘がいいのだろうか、一回ごとになんだかテクニシャンになっているように思えた。
 私はひたすらストレス解消の捌け口として、和夫に犯されながら、気を失うまでイキ続けていた。 
 ネットでよく見かける『自宅のパソコンで、男性と楽しくお話をするだけでおこずかいが稼げちゃう!』という謳い文句に心を引かれたのは、丁度、重なったローンの返済に頭を抱えていたときだった。
 調べてみると、それは『チャットレディー』とよばれる職種で、要するにネット上で男性相手にチャットをするという仕事のようだった。
 仕組みは簡単だ。
 女性会員はチャット運営会社と契約をし、会社のサイト上に自分のプロフィール(勿論適当)等を公開する。男性はサイトの会員となり、指定した女性とチャットをするために金を払う。
 女性側は男性とチャットした時間によって会社から金が支払われ、また、会話に参加しなくても、その会話を聞いている人が存在すれば、その分も支払われる。
 女性側にノルマはない。時間のあるときにとにかくそのサイトに繋ぎ、待機して、男性会員から指名があれば、稼げるのだ。
 一番稼げるのは、ライブカメラを使ったアダルト系のビデオチャットだ。男性とカメラ越しに会話しながら、エッチな話をしたり、お互いひとりエッチを見せ合ったりというものだ。
 ただこれは、たとえサングラスなどをかけていても、結構顔が分かってしまうものらしい。
 私は、割合と大きな会社でOLをやっており、取引先の人なんかにも顔を覚えられているから、万が一にでもばれたら厄介なことになる。
 それに、その画像が保存され、P2Pなどで流出するケースも多いと聞いている。そうなると致命傷だ。
 だからといって、ノンアダルトと呼ばれる、エロ無しのチャットだと、稼ぎはかなり少ない。
 じゃあ文字だけのチャットならバレないかも……と思ってみたが、こちらはほとんど需要がない。
 私は調べた結果、アダルト有りのボイスチャットをやってみようと思うに到った。これは、カメラ無しの声だけ。そのかわり、エロ話有りで、場合によってはあえぎ声をきかせたり、というもののようだった。
 声だけなら、万が一知り合いに当たったとしても、ごまかしがきくだろう。それに、アダルトライブチャットには劣るが、報酬もそこそこだ。

 初めてから数週間。
 思ったより、稼げない。同じサイトのビデオチャットに男性客は流れ、ボイスのみの女性はあまり相手にされないようだった。
 何人か固定客はついたが、いつもワンパターンにエロ声をあげたり
「○○さんのチンチンだと思って、バイブ使ってるの……」
 と適当なことを言って、携帯のバイブレーションをワザと聞かせたりするのも飽きてきて、もうやめようかなと、運営会社に電話したときだった。
 やめる理由を聞かれ、ビデオは無理だからボイスチャットにしたけど、稼げないから辞めたいんだと素直に答えたら
「通勤しませんか? 通勤だと、稼げますよ」
 と、提案されたのだった。

 アダルトチャットの通勤というのは、要するに自宅でチャットをするのではなく、運営会社の用意した事務所でチャットをすることだ。
 自宅にパソコン環境がなかったり、自宅でエロ声を出したり出来ない人なんかが利用するものだと思っていたが、そうでもないようだ。
 運営会社としては、いつ繋ぐか分からない在宅のチャットレディーより、男性客が殺到する時間に確実に待機させられるチャットレディーの方が有り難いらしく、通勤の方が、報酬が大きい。
 また、サイトのトップに『女の子ピックアップ』のような形で特定のチャットレディーを宣伝してくれたりするのだが、それも、通勤の女の子のようだ。
 会社としては、通勤で事務所を使わせている限りは元を取ろうというのだろう。あらゆる手段で、通勤の女の子に客が付くよう、配慮してくれる。
 また、通勤の女の子同士の情報交換もあり、常連客を紹介し合ったりということもしているらしい。
 運営会社の用意している場所は、私が勤めている会社から駅2つと言ったところで、しかも帰り道だ。
 1ヶ月だけやってみると返事をし、私は会社帰りの2時間だけ、通勤を決めた。
 彼氏はいないしひとり暮らしだから、誰に断る必要もなく、気楽だった。

 貸しビルのフロアにある事務所は綺麗で、ちょっとした企業のオフィスといった感じだ。
 奥がチャットレディーの仕事スペースになってて、ネットカフェのように個室が並び、中にパソコンが設置してある。
 飲み放題の自販機が置かれた休憩スペースには、何人かの女性がいて、私が顔を出すと、わらわらと寄ってきて、普段はなにをしている人なのか、他に登録しているところはあるか、そこは稼げるか、など質問攻めにあった。
 事務所のスタッフは男女半々といったところらしいが、夜遅くということで、男性が数人と言ったところだった。
 自宅待機だと、2時間待ってもお客さんが来ない日というのも結構あったが、通勤だと、結構ひっきりなしにお客さんがつくので驚いた。
 調べてみたら、いつの間にか人気ランキングに入っていたり、他にも細かな細工がされているようだった。
 個室は完全防音で、他の部屋の音も入ってこなければ、自分のいる部屋の音が漏れることもないので、気が楽だった。
 私はいつものペースで男性客の前であえぎ声を出したり、飴をなめて、フェラチオを装ったりして過ごした。
 何より有り難かったのは、通勤だと日払いと言うことだった。

 すっかり味を占めた私は、通勤期間を延長していた。
 いつも使う個室がだいたい同じなので、自宅のようにリラックスしてチャットに打ち込めた。飲み物もただだし、雑誌なんかも読み放題。冷暖房完備で快適だし、言うことはなかった。

 その日私は、少しイライラしていた。毎晩チャットレディをやっていたため寝不足気味で遅刻したのはたしかに私が悪かったが、だからといって上司の奴、ここぞとばかりに罵詈雑言。多分、普段のストレスを、私に怒ることで発散させていたんだと思われた。あきらかに仕事とは関係のない私の人格攻撃まで始めた。完全な八つ当たりだ。
 会社帰り、いつものように事務所に来て、いつもの個室でパソコンを起動した。
 私がインしてすぐに来たお客さんは、常連のひとりだった。優しい感じで、チャットエッチの流れやムードを作るのも巧い男性だ。
 いつもは適当に声をあげるだけの私だったが、その日はストレスが貯まっていたこともあり、その男性の声に導かれるまま、半裸になり、手を下着の中に入れた。乳房を揉み、秘裂をさすりあげ……本気の甘い声をあげ続けた。
『今日は大胆だし……声がいつもより艶っぽいね。こっちまですごい興奮するよ、どうしようもないくらいギンギンだ』
 そんなことを言われ、私の方も興奮してしまった。
「ギンギンのチンポ、欲しいなぁ……ねえ、入れて、入れてよぉ」
 はあはあと声を荒げながらそんなことを言い、自分をまさぐり続けた。オナニーなんて久しぶり。だからだろうか、もう、ぐしょぐしょになるくらい感じてしまい、最期は、相手の声が聞こえないくらいにひたすら、あえぎ続けた。

「お疲れ様でしたー」
 帰宅しようとした私を、男性スタッフの山岸が呼び止めた。
「香里ちゃん、ちょっと仕事のことで相談があるんだけど、いいかな?」
「……はい?」
 山岸は人差し指を上へ立てた。
 事務所はオフィススペースとして、貸しビルのワンフロアを借りているが、そことは別に、上の階にスタッフルームを借りている。そこへ来いと言うことらしい。私は不審に思いながらも、山岸の後に続いた。

「これ……」
「なかなか良く撮れてるだろう?」
 スタッフルームは雑然としていて、女の子の通勤してくる階下のフロアとは全く別の会社のように見えた。
 大きな机に書類やらテープやら……女の子の履歴書や缶コーヒーなんかが散乱していて、携帯電話や、なぜか黒電話が何台も繋がっていた。
 奥にはパソコンが数台。適当に置かれたソファは染みだらけだった。
 パイプ椅子に座らされた私は、山岸から『ライブチャットにこないか?』と誘われたのだ。そっちの方が数倍稼げるからと。
 例えカメラ越しにでも、男性に裸やひとりエッチを見せるのには抵抗があるし、顔バレが怖いからと断ったのだが、山岸は食い下がってきた。
 そして最期に、起ちあげたパソコンのモニターで見せられたのが……さきほどの私――ボイスチャットをしながら、思わずオナニーにふけってしまった私の映像だったのだ。
「隠しカメラ……」
「そうですよ。一応ね、全個室に設置してます。ログも全部とってあるしね」
 モニターの中で私の背中が震えていた。はずかしげもなく声をあげ、椅子をがたがた言わせながら狂ったようにあそこを弄っている自分のみっともない姿。
 羞恥で身体が動かない。
「こんな感じでいいんですよ。お客さん大喜び。君も稼げる」
「……キャァ!」
 椅子を蹴り、立ちすくんだままモニターを見つめていた私に、山岸が背後から腕をまわしていた。
「やめてください……っあァァ」
「ここまで大胆にオナニーしちゃう子もめずらしくてね、久しぶりに興奮しちゃったよ」
 山岸はそう言いながら回した手を私の上着の中に入れ、乳房をまさぐった。
「うう……」
 久しぶりのオナニーで身体が興奮していた上、モニター越しに恥ずかしい姿を見られていたことを知った私は、精神的にも高揚していた。
 大きな男性の手で乳房を揉みしだかれ、腰が砕けるほどに感じてしまう。劣情が身体を火照らせ、どうしようもないくらい淫乱な気分になってしまった。 
「もともと、好き者なんだね」
「そんなこと……アア……ッ」
 男の愛撫に身体が疼いてたまらない。下半身が熱くなり、下着がじんわりと濡れていく。
 内腿をもじもじとこすりつけている様子が、山岸にも分かったんだろう。
「もう欲しいのか? なかなか淫乱なんだな」
 恥ずかしさで目を閉じ、背後でかちゃかちゃとベルトを外す音を聞いていた。
 こんなの、職権乱用のレイプだと思った。だが、抵抗する気は、全くなかった。それよりも刺激が……ペニスが欲しくて欲しくて、溜まらなかった。
 そっと目を開ける。目の前の17インチモニターの中の自分は、いやらしい顔をしたまま、オナニーを続けていた。ボイスは再生されていなかったが、多分、チンポ欲しいと甘ったるい声で繰り返していたのだろう。
「ああ……大きいので、私のことメチャクチャにして……」
 そんな言葉が口をついた。
「君のエロ声はさ、素人っぽくてすごくいやらしいんだよ。だから、客も付くんだ。ぜひ、ビデオチャットでも働いて欲しいね。今時、プロっぽい子は、はやんないんだよ」
「あああっっ!」
 立ったまま背後から、スカートが持ち上げられた。下着とストッキングが同時に膝までずりおろされる。
「脱いじゃえよ」
 私は言われるままに、ストッキングと下着を剥ぎ取る。テーブルに手を付き、尻を突きあげると、山岸の手が腰に添えられた。
「女の匂いが漏れてるよ。すごい濡らしたんだな。今度からは替えの下着を持ってきたらどうだ?」
「ああ……」
 早く早くと、私は腰を振る。山岸の切っ先が持ち上げられた秘裂の中心に添えられた。
「サイト提供の番組用に録音するからな、名前とか言うなよ?」
「え?」
 答える間はなかった。
 私の身体を一気に快感が突き抜けていく。肉のぶつかる音がするたび、腰が砕けそうな快楽が私を貫く。
「ああ、あああ……アアッ」
「いいぞ、もっと声をあげろ! どうだ? 気持ちいいか? ひとりエッチで感じちゃってたのか?」
 山岸が耳朶で囁く。
「はい……、アア、すごく、すごく感じてましたぁぁ」
「ボイチャのエッチで感じちゃってたんだな? 気持ちいいか?」
「ハイ、あぁ、気持ちいい……もっと、もっと突いてぇ!」
 いつの間にか私の前に、パソコンに繋がる小さなマイクが置かれていた。
「ああ、ああアアア……っ」
 すごくいやらしい、と言われたあえぎ声を張りあげながら、私は絶頂を迎えた。   
  
「実は、就職活動に専念することにしようかと……。もちろん、高校合格までは一生懸命お手伝いさせて頂きますが、それ以降については、塾の方から、別の人を紹介させて頂きます」
 和哉はそう言って頭を下げた。
「和哉先生、やめちゃうの?」
「誠くんが高校受かるまでは、やめないよ。高校に入ってからは、別の先生になるんだ」
「残念だなー」
「あはは、ごめんよ。でも、どの先生もみんないい人だよ」
 和哉が息子の誠と話している間、私は立ちすくんでいた。頭が真っ白になって、なにも言葉が出なかった。
「お母さん、そう言うことですので」
 和哉に話しかけられ、ハッと自分を取り戻す。 
「そうですか……分かりました。残念です。とても……残念です」
 上の空で、答える。
「誠も……先生のこと、慕っておりましたから」
 本当に和哉を慕っていたのは、私の方だった。
 
 長男で一人っ子の誠には、学習障害がある。はじめは普通の学習塾に通っていたが、集団の指導にはついていけず、塾から家庭教師を派遣してもらうことになったのだ。
 それが、大学生の和哉だった。
 和哉は自分にも学習障害のある弟がいるということで知識もあり、誠にも精一杯に指導をしてくれていた。
 優しくて、落ち着いていて……礼儀正しく気持ちの良い青年だ。
 誠に関する私の悩みや、通っている発達心理の専門医には話しづらい家族ならではの相談にも乗ってくれていた。
 仕事が忙しく、出張も多い夫なんかよりずっとずっと、子育てしていく上で、和哉はいつの間にか、私の心のよりどころになっていた。
 そう。
 最初は、誠に関してのなくてはならない相談相手という感じだった。だけど私は、なんとなく気付いていた。
 私はひとりの男性として、ひとまわり以上も年下の……息子の家庭教師である和哉を、本気で愛していることに。
 私にとって週に1度、和哉が家に来る日は、特別な日になっていた。
和哉は私に会いに来るわけではなく、家庭教師の仕事をしに、息子の誠のところへ来るのだということは十分に分かっていた。実際、和哉が私と話をするのは、月に2度、保護者への学習進行の経過報告ということで取っている、わずか十五分程だけだ。
 たいてい誠が一緒にいることが多いし、プライベートなことを話す機会はほとんどない。けれども、時折雑談のような感じで和哉が誠の学習とは無関係な話をしたりすると、それだけで私はときめいてしまうようになっていた。
 こんな年下の男の子に自分が気持ちを傾けているなんて、とても信じられないような思いだった。最初は、夫との仲が微妙になっている自分が、現実逃避で身近な異性である和哉を求めているのかとも思っていた。
 でも、そうだとしたら、この張り裂けそうな胸の痛みはなんなのだろう?
 もっともっと、和哉のことが知りたかったし、私の話を聞いて欲しかった。
 無論、私は分別のある大人であり、母親だという自覚は持っている。
 結婚している主婦なのだから、息子の家庭教師という立場の和哉に自分の気持ちを悟られるようなことは極力避け続けた。第一、和哉のような若くて素敵な男の子が、一回りも年上の子持ち主婦なんかを相手にするはずはない、という、まあ、当たり前に考えられることも、私の感情の暴走には、良いブレーキとなっていた。
 それでも時折、和哉への募る思いが押さえきれなくなったとき、恥ずかしい話だが、何度か携帯電話で出会い系のサイトへ繋いだ。
 カズヤ、というハンドルネームを意味もなく探し、それが本人ではないと分かっているのにメールを出してしまったり、電話でテレフォンセックスをしてしまったり……。
 ばかばかしいと自分でも分かっている。けれど、『カズヤ……』と名を呼び、相手にも自分の名前を呼んで貰えるだけで、どうしようもないほどに身体が火照り、震え、高揚した。
 カズヤ、カズヤ、と声を荒げながら乳房を弄り、びしょびしょに濡れた割れ目に指を突き立てるだけで、私は激しく乱れ、夫とのセックスですら感じたことがないくらいに興奮し、いやらしい言葉を並べ立てる。
――ああカズヤ、大好き、大好きよ。あなたのチンポを頂戴……
――カズヤ、本当に愛してる。もっともっと、私のこと気持ち良くして、弄って、ぐちゃぐちゃにして――!
 和哉の顔を、姿を思い浮かべながら、私は気をやる。
『すごく良かったよ……ねえ、実際に会ってみない?』
 電話の向こうの『カズヤ』にそう言われ、ハッと我に返る。
 慌てて電話を切り、そして自己嫌悪に浸る。
 なんて私はいやらしい女なんだろう。息子の家庭教師を好きになり、抱かれることを想像して無関係の男相手にテレフォンセックスにふけるなんて。
 でも、そうやって気を紛らわせていないと、耐えられなかった。和哉への淫らな気持ちを、私は普段必死に押し殺しているのだから。
 和哉が2階の誠の自室で誠の勉強を見ている間、私は1階のトイレに篭もり、声を殺してオナニーにふけることもしばしばだった。
 いやらしい匂いをまき散らす下着をつけたままで、来週もよろしくお願いしますと、頭を下げる。
 淫乱で、ひどい母親だと自分でも思う。けれどそうやって私が劣情を隠していれば和哉との和やかな関係は続くのだから、その方がいいじゃない? ずっと、そう思って、気持ちを抑え続けてきた。

 それなのに、来年度はもう来ない?
 誠の家庭教師を辞める?
 私の中のなにかが、ガラガラと崩れ落ちていくのを感じた。

「お呼びだてしてスミマセン」
「いえいえ、なにか困ったことでもありましたか?」
 ある平日の午後。私は学習塾に電話して、息子の今後のことや、後任の家庭教師について相談があると、和哉を呼び出した。
 今日、息子の誠は学校から直接、私の実家に泊まりに行くことになっている。夫の帰りは遅い。かなり長い時間、私と和哉はこの家でふたりきりになれる。
「どうぞお座り下さい」
 ソファに座らせ、私は和哉にお茶を出した。和哉はテーブルの上に、なにやら書類を広げている。後任家庭教師の資料か何かのようだ。
「誠くんは難しい生徒ですからね。お母さんが後任の家庭教師について不安に思っているのはよく分かります。ですが、引き継ぎはしっかり致しますし、経験のある講師を派遣しますから、ご安心なさって大丈夫ですよ」
 黒いセーターに、ジーンズの和哉。美青年とは言えないかもしれないが、笑顔が人なつっこく、心根の優しさや正しさが、顔に出ている和哉。ああ、和哉。やっぱり、この和哉に会えなくなるなんて寂しい。耐えられない。
 だからせめて……。
「塾はお辞めになるということですよね。個人的に……塾を通さず和哉先生に家庭教師をお願いするということは出来ないのでしょうか?」
「先日もお話ししましたとおり、僕は今度4年になります。就職活動に専念したいので、アルバイトは一切やめようと思っているのです」
「残念です」
「そう言って頂けて嬉しいです」
「誠も残念がっておりますが、何より私が、残念でたまりません」
 自分でも、声が震えるのが分かった。お茶を手にし、飲み干す。
「私、和哉先生のこと、だ、大好きでしたから」
「ありがとうございます」
 和哉は普通にそう言い、頭を下げた。
 まさか、一回りも年の違う私が、自分に愛の告白をしているなんて思ってはいないのだろう。単に「息子の家庭教師として評価している」程度の事を私が言っていると思ったようだ。
 違う、そうじゃない、そうじゃない!
「先生のこと、お慕いしておりました。お会いできなくなるのが、辛いのです」
 そう言いきった私の顔を、和哉はしばらくきょとんとして眺めていた。
「ずっと、気持ちを抑えておりました。先生、もういらっしゃることがないのなら、私のこと……だ……だ……」
 和哉の顔が、みるみる赤く染まる。
「抱いてください!」
 テレフォンセックスで、架空のカズヤに対しては、あれほど大胆にいやらしい言葉が言えたのに、本物の和哉を目の前にした私の口からは、そんなありきたりな言葉しか出なかった。
 それでも私は懸命だった。そしてそれを言った瞬間、羞恥でいっぱいになり、どうしようもないほど身体ががたがたと震えた。
 和哉はなにも答えてはくれない。このオバサン、なにを血迷ったんだ? そんな風に思っているのかもしれないと思うと、消えたかった。
――ゴメンナサイ、冗談です忘れてください――
 そう言ってごまかそう、告白しただけで、それだけでもういい。
 そう思っていると、すっと、和哉が立ちあがった。
 怒らせたんだ! 帰ってしまう。
 私も慌てて立ち上がり、真っ青になって言い訳の言葉を探した。
 だが和哉は私の方に近寄ると、そっと肩に手を置いてくれた。
「あ……」
 温かく大きな和哉の手。
「気付いていました。寂しい思いをさせて、本当に申し訳ありません」
 和哉の顔が近づく。
「んん……」
 目を閉じる。唇に生暖かい息づかいを感じた。  

「あ……ああ、アアアッ」
 和哉のためにつけた黒い上下のランジェリーが、肌を擦る。
 和哉は半裸になって、私の首筋を、肩を、そして下腹部を指でまさぐる。
「ああっ」
 ブラジャーが外され、乳房があらわになる。
 形の崩れた乳房が恥ずかしくて、私は隠そうと手を添えた。だが和哉はその手を優しく噛み、手の下からこぼれた尖る乳首を口に含んだ。
「ああ、あああ……」
 夢のようだった。
 和哉に、和哉に抱かれているなんて!
 和哉は私の身体を柔らかく愛撫し、そして高めてくれた。テレフォンセックスの相手のように、下品な言葉を要求することもなく、ひたすら私を感じさせてくれていた。
「あううう、んんんん……っっ」
 手を伸ばす。和哉の膨れあがっている下着に触れた。優しく包み、揉みしだく。
「うう……っ」
 和哉が顔を崩し、声をあげる。
「横に……なって下さい」
 私は和哉を仰向けに寝かせ、下着を外すと顔を下半身へ近づけた。
 ああ、和哉の大きなチンポ。若いというのはこういう事か。触れてもいないのにぴくんぴくんと脈打つ。
 鉄のように熱く固いそれは、お腹に張り付いたように勃起している。
 私は、タマの方から舐めあげるように切っ先に向けて舌を這わせた。
「くぅ……」
 悩ましい和哉の声。私は夢中で勃起を口に含んだ。
 じゅぼじゅぼと音を立てながら、夢中でしゃぶる。今後和哉がどんな女にしゃぶり付かれても、私のことを思い出すように……知っている限りのテクニックを惜しげもなく使い、和哉に甘い声をあげさせた。
 愛しい和哉のペニスが震える。私は手指も使い、タマからサオから……和哉のアヌスまでも夢中で舐めあげた。
「すご、すごすぎます……もう、お母さんの中に、入らせてください……」
 和哉の吐く荒い息遣いと、舐めあげる淫音がまじり、いやらしく響く。
 和哉が上半身をあげ、逆に私を押し倒した。
「こんな悪いお母さんだなんて……」
 和哉は少し乱暴に、私のショーツを剥ぎ取り、脚の真ん中に勃起を突き立て、一気に貫いた。
「アアアアッッ!」
 夢にまで見た瞬間。身体が宙に浮いてしまうかのような錯覚が私を襲った。
「すごい……こんなに……濡れてるなんて……。それに、柔らかい」
 和哉は夢中で腰を動かす。理性のタガがはずれたかのように、乱暴に、私を突きまくる。
「ああ、ああああ、ああアアッ!」
 和哉の中に、こんなにも激しい一面があったなんて。
 私たちは夢中でお互いの身体を貪りあい、何度も何度も、クライマックスを迎えた。
「ああ、和哉、和哉……」
 和哉の名前を本物の和哉の前で……。何度も何度も呼びながら、私は終わりの見えない絶頂の声をあげ続けた。
 卒業旅行は、ひとり旅にしよう――。
 私は以前からそう決めていた。
 私はどちらかというと『金魚のフン』タイプだ。自分で何かを決めて皆を引っ張っていくことはなく、いつだって、皆の決定についてゆく。
 自分の決定に自信はないし、責任も負えないからという、ものすごく情けない理由――。私は自分のそんな性格が前からいやだった。
 私は大学卒業後、地元の大きな商店で事務をやることが決まっていた。ハッキリ言って、両親のコネだ。自分の進路まで、私は自分で決定できない。
 私は、自分のこの性格をなんとかしたいと、いつも考えていた。だから、卒業旅行はひとり旅にしようと、そんな風に思っていたのだ。全部自分で決め、責任も自分で取ろうと。
 旅行会社のパックなんかも使わないで、自分で計画を立て、実行するつもりだった。社会に出る前に、それで少しは自分に自信をつけたかった。

 私が旅行先に選んだのは、イギリスだった。ひとりでなんでもやろうと思った割りには情けない話だが、実は大学でとても慕っていた先輩が留学していて、以前から『香澄も一度いらっしゃい』と誘われていたのだ。
 両親には、大反対された。せめて、友人達と一緒に行きなさいとさんざん言われた。
 お前がひとりで飛行機に乗り、ひとりで外国の地に降り、先輩がいるとは言っても、その先輩が学校に行っている間ひとりでそこら辺を歩き回ったり観光したりするなんてとても考えられないというのだ。まあ、気持ちは分かる。
 海外旅行は、過去に二度行ったことがあるが、どちらも至れり尽くせりのツアーで、しかも日本語が適当に通じる台湾とハワイだった。
 けれども、私の決心は固かった。中途半端なひとり旅で、しかもたった五泊ではあるけれども、私は自分を変えたいのだ。思い切って海外に行くのはとてもいい選択に思えた。

 出発の日、母は私に6つもお守りをくれた。交通安全と身代わり守りがふたつずつ、それに盗難避けになぜか学業のお守りまであった。とにかく、母が私を心配してくれているのだけはよく分かるラインナップだった。
「一日二回は必ず連絡を寄越しなさいね。連絡がなかったらすぐに110番するからね! 香澄、わかったわね!」
 何度も言われた。
 110番でそういった話を聞いてくれるのかは分からなかったが、とにかく必ず連絡すると約束し、私は送り損ねた荷物を抱え、バスで空港へ向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あの香澄ちゃんがひとりで来るなんてねぇ。成長したわねー」
 ロンドンで私を出迎えてくれた川島先輩は、半泣きの笑顔だった。
「乗り継ぎはちゃんと出来たのね? 大丈夫だったのね?」
 実は、乗り継ぎで戸惑い、私は川島先輩の携帯に、何度も何度も……ほとんど泣きながら電話をかけていたのだ。先輩は相当心配してくれたらしい。
 先輩の横には、大柄の白人男性が笑顔で立っていた。
「あの、こちらは?」
 私が尋ねると川島先輩はとろけるような笑顔で答えた。
「前に話した、私の彼氏。ケビンよ」
「ハジメマシテ、ケビンといいます」
 ケビンという、長身で栗色の髪の男性は、流ちょうな日本語で私に頭を下げた。年は、私より3つ上だと聞いていたが、外人の年齢はよく分からない。もっとずっとずっと、年上でアダルトに見えた。
「ケビンの日本語は私仕込みよ。日常会話くらいなら問題ないから、こき使ってやってね」
 川島先輩は幸せそうだった。将来ふたりで日本に戻り、結婚したいんだと話してくれた。
 正直、私は外人顔の区別がいまひとつ付かない。洋画を見ていても、なんとか区別が付いているのは主人公くらいで、あとはどれも全部同じ顔に見え、話が混乱することすらある。
 そんな私から見ても、ケビンは格好良かった。服が替わったら見分けがつかなくなってしまうかもしれないけど、その時には、額にある少し大きなほくろを目印にしよう。

先輩は、自分のところへ泊まれと勧めてくれたが、私はあえて、中ランク程度のホテルを宿泊場所として選んだ。何もかも先輩におんぶに抱っこでは、目的が果たせない。
 先輩もそこら辺の事情や私の考えは尊重してくれ、観光案内はするけれど、計画は自分で立てなさいと行ってくれた。
 だが、私の立てた綿密な観光計画は、先輩に笑われて却下されてしまった。私は、地下鉄やバスの発着時刻などを無視して、計画を立てていたから、それではダメだというのだ。
 到着したその日はレストランで夕食を共にしながら、計画を立て直した。先輩はボロボロになったイギリス国内向け観光案内の本を片手にペンを握り、ケビンはその横で、ニコニコとしていた。
 本当にあっという間の旅行だった。
 私は先輩やケビンと楽しい時を過ごし、家への連絡も遅れがちだった。ある日は、先輩にもケビンにも頼らず、ひとりで買い物へ出かけた。ビクビクしながらだったが、とても楽しく、充実した時間が過ごせた。

 明日、日本に帰るというその日。
 私は先輩やケビンと、評判のレストランで夕食の約束をしていた。
 一張羅を着込んで、先に待っていた私のところへ現れたのは、ケビンだけだった。
「川島先輩は?」
 ケビンが説明してくれた。先輩はアルバイト先のトラブルでどうしても出勤しなければならなくなり、来られなくなってしまったのだと。
「せっかくのヨヤクだから、ふたりで、たべてこいと、イッテました。ザンネンですが、ふたりでショクジしましょう」
 笑顔のケビンにそう言われ、ドキドキしてしまった。先輩には申し訳ないが、ロンドンで、素敵な男性とふたりきりで、しかもこんなにも素敵なレストランで夕食なんて、夢みたい。
 食事も、雰囲気も最高だった。
 ケビンは優しくて紳士で、なかなか上手な日本語で、一生懸命私に話を振ってくれた。こんな素敵な人が彼氏だなんて、先輩が羨ましくて仕方がなかった。
 私はついつい、飲み過ぎてしまっていた。緊張もあったし、話がとぎれたときなんかにどうしたらいいか分からなくて、ついグイグイとグラスを空けてしまったのだ。店を出る頃には恥ずかしながら、少し足元がふらついていた。
「ダイジョウブ?」
「OK、OK!」
 全然、OKではない。
 ケビンは近くに自分のアパートがあるから休んで行きなさいと言ってくれた。私は深く考えず、言われるままについていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 どうしてそうなったのかは、よく覚えていない。私の肩を支えてくれていたケビンの手がだんだんと腰へ下り、そして強く抱きしめられたっけ。
 気付くと私は下着姿で、ケビンの匂いが強烈にしみこんだパイプベッドのマットの上にいた。そして上半身裸のケビンに向かって
「処女なんです、処女なんですよー」
 と、うわごとのように繰り返していた。
「ショジョ?」
「えと……バージン?」
「おお。バージンね。ショジョ、ショジョ、バージンのコトね」
 本当に分かってるのかどうか。ケビンは『ショジョ』という言葉の響きが気に入ったようで、その言葉を繰り返しながら、私の肌を探った。
「ああ……」
「カスミ、ショジョ、ショジョ」
 耳元で囁かれ、恥ずかしいやら何やらで、私は舞いあがってしまった。
 不思議と、先輩に申し訳がないとか、こんなのはよくないとか、そういった感情はなかった。異国の地での夢の続きくらいにしか、私には思えなかったのだ。
 ケビンは優しく私の身体をまさぐり、ゆっくりと下着を外してくれた。
 ナイスバディの白人女性や、スタイルのいい川島先輩と違い、私のバストはかなり小さい。それが恥ずかしくて、私は股間の方ではなく、ついつい、胸を手で覆う。じっと見られていると、耳まで赤く染まってしまう。
「ハずかしい? カワイイね。ショジョのカスミ、カワイイね」
 ケビンは胸を覆う私の手の甲に何度も唇を押しつけ、それから優しくその手を噛んだ。
 思わず手をのけ、乳房を晒す。乳房を包み込むようにケビンは大きな口を開け、吸い付き、舌を這わせた。
「あああっ」
 背筋を快感が駆けあがっていった。私は処女ではあったが、一応、ペッティングまでは経験済みだった。その時よりもずっと強い快楽が、私を包み込むのが分かった。
 ケビンは始終何かを囁きつつ、剥き出しになった私の身体に、指や舌を這わせた。私はあまりの興奮で、ケビンの囁きが英語なのか日本語なのかすら分からないほどだった。けれど、それは甘く、心の奥がギュウと切なくなるような響きで、私の緊張も身体も、どんどんほぐれていった。
 乳房のみならず、首筋や肩、腹、そして脇の下まで、ケビンの愛撫は及んだ。
 やがて愛撫の対象が上半身から下半身へ……尻をやさしく揉まれ、太腿や内腿、そして脚の間にケビンの舌先が滑り込む。
「アア……ッ」
 自分ですら丹念に触れたことのないその場所を、生温かな舌が舐め回す。溢れる体液を啜りあげる淫靡な音に、ゾクゾクするような快感が背筋を駆けあがっていく。
 経験のない私に、ハッキリとした性感は得られなかった。けれども私は、シチュエーションと、ケビンの巧みな性愛の演出に酔っていた。
 むず痒いような下半身の疼きが、心の高ぶりとともに次第に肉体的な快楽へと変わっていく。
「ああ、ああああ……アアアッ!」
男性を受け入れたことのない淫肉が疼き、閉じた秘穴から蜜が滴る。十分に潤ったそこには、今だったら痛み無しでもきっと……。
「イイ? シテイイ?」
 ケビンの甘い問いかけに、私はイエスと答えた。切ないほどの欲望を抱え、ただベッドに横たわっている私の横で、ケビンがおもむろに下着をおろした。
「……ひッ!」
 デカイ!
 いつか見た裏ビデオの男優のそれより遙かにデカい真っ赤なイチモツが、ケビンの股間にそそり勃っていた。生々しくてグロテスクで、なんだかそこだけ優しいケビンとは別の生き物なんじゃないかと思える。 
 こんなの、まさか本当に挿入られちゃうわけぇ――? 緊張で身体が固くなる。
「リラックス、カスミ、リラックス」
 ケビンは再び私に覆い被さり、綺麗な顔を近づけ、私の頭を撫でてくれた。太腿に当たるそのイチモツは熱くて重量感たっぷりだ。
「OK。カスミ、バージン。ダイジョウブよ」
 ケビンがその場を離れると、何かを手にして戻ってきた。オリーブオイル? どうするのよそれ――。
「ああっ!」
 冷たいオイルが、拡げられた股間に落とされた。ケビンは丹念に、私の脚の間にオリーブオイルを刷り込んでゆく。
 冷たかったオイルはやがて人肌に温もり、愛液と混じって私の肉を滑らかにしてゆく。
「チカラぬいて。ダイジョウブ」
 再びケビンが私に覆い被さる。
「ああ……アッッ!」
 叫びかけた私の口を、ケビンの大きな唇が覆った。メリメリと避けるような感覚が下半身をだるくさせる。
「うう、うううう……」
 処女膜が破れる激痛。そして肉壁をケビンの巨根が擦りあげる。
「く……うう、くぅぅ」
 ケビンのペニスがゆっくりと動く。じんじんとした痛みを和らげるように、ケビンは私の乳房や首筋に愛撫を繰り返す。
 やがて私は、何がなんだか分からなくなっていった。痛いんだか、気持ちいいんだか。私の感じているのは悦びなのだろうか、それとも苦痛なのだろうか?
「カスミ、イイよ、イイよ」
 ケビンの声に、私はひたすら、イエス、と答えた。次第に痛みの波が引き、快楽が大きくなっていた。
「カスミ、カスミ……」
「ケビン、イエスイエス、イエスよっ。アア、アアァァアア……ッ!」
 麻痺したかのように開きっぱなしの膣壁内に脈動を感じて、私はしがみついたケビンの背中に爪を立てた。
 ついに処女じゃなくなったのだという思いより、この卒業旅行で私はきっと変われたという達成感の方が大きく、私の心を明るくしていた。
「ああ、ケビン……」
 この男性にとっては、多分気まぐれに起こした行動だったのだろう。だけど私は感謝していた。
 と同時に、こんな大きいのを挿入られちゃって、ガバガバになってないのかしらんなんて、そんなことを心配していた。
 晴れ渡る空。心地よいそよ風。暑くもなく寒くもなく……絶好の行楽日和だ。
 傍らには、彼氏の高広。高広は私より四つ年下の二十三歳で、友人の紹介で知り合い、つきあい始めてまだ半年だ。
 高広はどちらかというと奥手で、私が年上であることを過度に意識しているのか、あまり積極的にアプローチしてこない。ハッキリ言ってしまうと――ふたりの関係はまだ、キス止まり。
 高広は、そろそろなんとかしようと焦っているようだ。でも、きっかけがなく私に手を出せないっぽい。女性経験はかなり少ないか……もしかしたらないのではないかとも思われた。
 私の方はといえば――やっぱり、あまり経験はない。だけど処女ではなく、高広の前に二年間、付き合っていた男性がいた。その男性と一年半前に別れてから高広に会うまでは、恋愛とかエッチとか、そういうものとは無縁な生活を送っていたのだ。
 年下の高広は私を頼ってくるところがある。私も姉御肌なところがあるし、高広みたいなカワイイ男性に頼られるのは嬉しいし、張り合いがある。 
 高広とのファーストキスも、最初は私から誘うような感じで、した。高広がしたがってるの分かってたし、私もしたかったから。それに高広からしてくれるのを待っていたら埒があきそうになかった。
 高広はエッチも、私から誘ってくるのを待ってるふしがある。本当は、エッチくらい、男性側から強引なくらいにリードしてもらいたいなって気持ちはある。
 いつもとは逆に、私が高広に甘えて甘えて、少し子どもぽいところを見せたら。そうしたらもしかして、高広が少し積極的になってくれるんじゃないか――?
 私は、そんな期待をして、少し子どもっぽいかなとは思いながら、遊園地へのデートを提案したのだ。
 高広には話していなかったが、私は絶叫マシン系が大の苦手だ。私はいつもしっかりしていると思われているから、こういうウィークポイントを見せておけば、高広も少しは私に対して『しっかりしなくちゃ』と思ってくれるかもしれない。
 今日のような行楽日和の遊園地デートは、私にとってそんな演出に最適だった。
 朝からワクワクして、いつもより少しカワイ目のスカート姿に身を包んだ。
 ただ、いくつか誤算があった。
 ひとつは、高広も絶叫マシン系が大の苦手であったということ。しかも、私以上にダメであったということ。これは、もう帰ろうかと思うくらいの大誤算だ。
 そしてもうひとつは――。
 混んでいたのだ。激が付くくらいの大混雑。どうやら近県の人が県民の日かなにかで、入場無料デーだったらしい。
 どうでもいいアトラクションに乗るのでさえ超時間並ばされ、食事を取るのすらままならない。
 一番人気の絶叫マシンなんて、どれくらい待たなければならないかすらよく分からない程の列を作っていた。
「無理に乗るのやめよう。僕、怖いし」
「……そうね」
 なんだか、グダグダしたデートになってしまい、私たちはとにかくあんまり人が並んでいない乗り物――大して盛りあがらないアトラクションをハシゴして、時間を潰した。

「アレ、乗ろうよ」
 なんだか疲れてしまい、少し早めに切り上げて、あとひとつくらい乗り物に乗ったら帰ろうといった空気の中、高広が観覧車を指さした。
 見てみると、長い待機列は出来ていたものの、列自体はかなり早く進んでいるようだった。
「観覧車大きいし、最大搭乗人数も多いでしょ。どんどん乗り込んでいくから、きっとスムーズなんだよ」
「なるほどねー」
 時間は夕方。日が沈みかけ、空はほんのりあかね色。観覧車といえば密室。最後の最後にちょっとロマンチックかもしれない……。
 そんな期待を胸に行列の最後尾に並び、
「本当に、サクサク進むね」
「ねー」
 なんて言いながらいざ乗り込む直前、目に飛び込んできた一枚の張り紙に、私はガックリと肩を下げた。
『本日は混雑しております。お客様にはご迷惑をお掛けしますが、御相席をお願いしています』 
 どおりで列がサクサク進むわけだ――。

 私たちと共に観覧車に乗り込んだ相席のカップルは、最初から挙動不審なところがあった。
 こちらがガッカリしながらも笑顔で会釈したのに、男性の方は黙礼。女性の方はこちらと目を合わせようとすらしなかった。
 観覧車は振動しながら上を目指して回る。私は、窓の外を見ていた。
 並び始めたときはほんのりあかね色だった空が、今は見事な夕焼けに変わっていた。
「きれいね」
 高広を見た。高広は、なぜか動揺した顔つきで、目の前のカップルを盗み見ていた。
 私もそっと、カップルを見る。
 私よりもかなり年上だと思われる男性の方は黙って窓の外を見ていた。そしておそらく高広と同じ歳くらいの女性の方は……なにやらかたかたと震えていた。
 うつむいた顔が真っ赤になり、涙さえ浮かべているように見えた。
 薄手のトレンチコートをかっちり着込んでいたから、寒いということはなさそうだった。けれど、露出した素足は粟立ち、膝の上でコートを握りしめた両手も筋張って見えた。
 もしかして、別れ話したてのカップルかもしれない――。あまりにも様子のおかしいカップルに、私は閉口した。折角のロマンチックな夕焼けも、相席カップルのせいで台無しだ。
 観覧車内は静まりかえり、がたがたという機械のきしむ音だけが……いや、それ以外にも、奇妙な音が室内に響いていたのに、私はその時初めて気が付いた。
 不自然にくぐもったモーター音だ。その音には聞き覚えがあるような――。
「前、開けろ」
 そろそろ観覧車が一番頂上に到達という頃だった。緊張しきった観覧車の中に、威圧的な男性の低い声が響いた。相席カップルの男性だ。
 その声に女性が小さく「はい」と答え、座ったまま、トレンチコートのボタンを外し、前をはだけた。
「……えっ!」
 女性は全裸だった。トレンチコートの下には、下着すらつけていなかった。
 私の横で、高広が息を呑むのが分かった。軽く開いたその女性の脚の間から、コードが伸びていた。
「ああっ!」
 男性がそのコードをたぐると、思い切り引いた。その瞬間、女性の剥き出しの股間からピンク色をした卵形の――ローターが飛び出して床に転げ落ちた。
「ああ、あああっっ!」
 ぷるぷると震えながら、女性は身体を折り曲げて歓喜の声をあげ続けた。ローターは女性の体液を絡ませたまま、金属製の床でカラカラとはね回る。どれだけ激しい刺激を今まで女性に与え続けていたのかは想像に難しくない。
このカップルは露出プレイをしているんだ――! 私は驚愕した。
 女性はウンウンと唸りながら恍惚としているし、男性の方は
「人に見られて感じたか、お前は本当にヘンタイだな」
 などと、ぼそぼそ女性に言っている。女性はそのたびに、アア、だとか、もう許してください、なんて甘い声をあげる。
 今までエッチなマンガやDVDの中だけだと思っていたSMプレイのひとつが目の前で行われているのを見て、私は怖くなった。第一ここは地上の密室だ。逃げ場もない。
 男性は女性の身体をまさぐり始めた。女性はあんあんと、だらしない喘ぎ声を張りあげる。それを見ていたらなんだか、現実感が薄くなっていった。
そして、目の前で淫靡な表情を浮かべる女性がもしも自分だったらと……そんなはしたないことを考えてしまって……。
 高広の腕をぎゅっと掴んだ。その時だ。
 高広が立ちあがると、そのカップルの前に立った。
「高広……っ」
 高広は床で転げ回ったままのローターのコードをつまむと、男性に突きつけた。
「お兄さんもこのメス犬のおまんこに突っ込んでやりますか? 大歓迎ですよ」
 ニヤニヤしながらそう言う男性と、甘ったるいため息の女性に向かって高広は、
「迷惑です。こういう事は、同好の士と楽しんでください。私たちにとってあなた達の行為は犯罪です。証拠の写真を撮って、警察に訴えることも出来ます。それがイヤなら今すぐ肌を隠して下さい」
 と、キッパリとした態度で、落ち着いた声を出してそう言った。

 遊園地を出た私と高広は駅を通り過ぎ、歩いていた。ふたりとも無言だった。
 言いたいことは沢山あったし、言わなければいけない気もしていた。だけど、駅を足早に通り過ぎ、まだ歩いている高広の何か思い詰めたような様子に圧倒され、私は何も言えなかった。ただ、年下の高広の腕にしがみついていた。
 陽はすっかり落ち、空には星が瞬き始めていた。人通りの少ない方へと、高広は足を速める。
「休んでいこうか?」
 大きな自然公園の前で、高広が静かにそう言った。私は頷き、高広に従う。
 遊具のある児童公園を抜け、ベンチが点在する遊歩道を通り抜けてゆく。明かりのない木々の連なる林へと高広は私を連れ、やがて足を止めた。
「高広?」
 突然強く抱きしめられ、私は短く声をあげた。
 高広は何も言わず、強引に私の唇を吸うと、近くの巨木に私を押しつける。土と木の強い香が鼻をつく。
 高広は私にのしかかるようにしてスカートの中に手を差し入れた。
「た、高広……っ! ちょっと、こんなところで……」
 高広の荒い息づかいが、耳朶に響いた。こんなにも興奮し、熱くなっている高広は初めてだ。
「やだ、まさか。さっきの……」
 観覧車にいたカップルを見て興奮しちゃったの――? 私はその問いかけを、寸でで飲み込んだ。高広の手が私のシャツをめくりあげ、胸元を探り、乳房を強く揉みしだく。
 さらに高広は立ったまま私のスカートの中を手繰り、下着に手をかけた。
「ああ……」
 乱暴にゴムを引っ張り、ずりおろす。
 こんな、こんなレイプみたいな……。いつもは大人しい高広のあまりの豹変ぶりに私は戸惑い、抵抗することすら出来なかった。
 それに何より……私は濡れていた。どうしようもないほど滴り、内腿までいやらしい蜜を流していたのだ。
 公園に入ったときから……駅を無視して歩く高広の腕にしがみついていた時から……いいえ、観覧車で露出カップルに毅然とした態度で対峙した高広を見たときから私は、こんな風にされるのを心のどこかで望んでいたのだ。
「あ……アア……」
 私の身体を背後の木に押しつけるようにもたれた高広は、私の脚の間に指を差し入れた。指が肉びらを割り、ぐちゃぐちゃになった秘穴にねじ込まれる。
「んんん……っ」
 乱暴なほどに掻きむしられ、私の秘所は激しく収縮を繰り返し、高広の指に淫乱に絡みつく。
「ごめん、俺、もう我慢できないから」
 ハァハァという激しい息づかいの混じった高広の低い声が、耳朶に囁かれる。
「ああ、ああああ」
「わ、私も……ああ、ああ」
 高広は激しく熱いキスを重ねながら、自分の方へ私の身体を引き寄せた。なんてすごいディープキス……。頭の芯がジンジン痺れるようなその快楽に酔っていると、突然私は身体を返された。
「え……? あ……」
 高広が肩で息をしながら、ズボンのベルトを外している。まさか本当にここで、こんなところで――。
 呆然としていた私は背後から抱きしめるようにして、木に押しつけられた。木に両手をつき、お尻だけを突き出した立位の恰好だ。
 高広は私のスカートをめくりあげた。既に下着は剥ぎ取られていて穿いていない。剥き出しの濡れた尻に生ぬるい風が当たってすうすうとする。
「あ、あああ」
 高広の熱い手が私の腰を強い力で支え、さらに突き出すように引く。突き出されたその中心に、背後から熱く固く、大きな肉の塊が押しつけられ、そしてグイグイとねじ込まれた。
「アア、アッ、ひっっ!」
 身体中がビリビリと痺れるような激しい快感に、私は身体をのけぞらせた。
「ああ、あああ……アアッッ!」
 よほど大きな声をあげていたのだろうか。高広の大きな手が、私の口を塞ぐ。
「ん、んんんん……」
 高広はテクニックも駆け引きもなく、ひたすら必死に……乱暴なくらいメチャクチャに、私に欲望をぶつけ、秘肉を掻き回し、奥までガンガンと貫いてきた。こんなにも野性味溢れる若いセックスは新鮮に私を狂わせた。
 野外でレイプ同然に犯される羞恥と、今まで感じたことのない程深い快楽とに溺れながら、私は何度も何度も昇りつめていった。
「アアまた、またイッちゃうぅっ!」
 少し計画は狂ってしまったけど、遊園地デートは正解だったのかもしれない。
 待ち合わせ場所は、人の多い喫茶店が安全だ。何かあったときに人目があるのとないのとでは、全く違う。
 少し早めに来て、入ってくる男性客に注目する。
 目印を持った男が、あまりにもタイプとかけ離れた場合はそのまま無視して、店を出る。まあいいんじゃないかしらと思えたら、さっとテーブルの上に、目印として持ってきている真っ赤な革の手帳を出しておく。
 気付いた男が近づいてくる。私はにっこりと微笑んでみせる。
「マキコさんですか?」
 私は頷き、座ったままで男に視線を向けたまま、軽く頭を下げる。

 私が出会い系サイトにハマり、そこで火遊びを繰り返すようになったのは、ほんの数ヶ月前だ。もうすでに、十人以上の男と関係を持っている。
 上は50過ぎから、下は……高校3年生の可愛らしい坊やまで。この中の七人とは、今でも継続的に関係を続けている。
 それでも、飽き足らない。毎日、誰かに抱かれ、犯されていなければ気が済まない。
 だから私は今でも出会い系を続け、会える男を漁っている。私のスケジュール帳を、毎日男との逢瀬で埋めたい。そうしなければいられないのだ。

「驚いたな。こう言ったら失礼かもしれないですけど、マキコさんって、見た目は貞淑な人妻って感じじゃないですか。その……なんていうか……」
「出会い系をしているようには見えませんか?」
「そうですね」
 目の前の男――五日ほど前に出会い系サイトのチャットルームでチャットエッチを楽しみ、実際に会おうという話になった香川という、私よりちょっと年上の三十三歳の男は、苦笑しているようだった。目に、不安のかげりが見える。
「ご心配ですか?」
「いえ、あの。君と会ってたら怖いお兄さんが出てくるとか……」
「いやだわ、そんなんじゃないです」
 この男、美人局を心配していたのか。そういうのにひっかかったことがあるのかしら?
 香川は、ビジネススーツを着ていて、脇には書類ケースを抱えていた。仕事を午前であがってくると言っていたのを思いだした。
 髪型も整っているし、靴も上等だ。もしかしたら、結構いいところの会社員なのかもしれない。
「正直言うと、出会い系サイトで知り合った人と実際に会うのは、今回が三回目なんです」
 香川は話し始めた。
「一人目は、会ってすぐにお金を要求してきました。その場で別れました。面倒はいやでしたから。二人目は、男連れで来ていました。待ち合わせの場所へ行く前にそれが分かったので、逃げました」
「あら」
 私は、思わず笑ってしまった。
「それなのに良く、三人目と会おうなんて思われましたねぇ」
「チャットでの感じがすごく良くて、期待してしまいました。実際お会いしたら、期待以上で……あまりにも普通に上品な奥さんだったので、逆に警戒してしまって……」
「私、ちっとも上品なんかじゃないんですよ……私、ちょっと変わっていて」
 私は香川に好意を持ち始めていた。セックスの相性が良ければ、長く付き合っていけそうな予感がした。香川の薬指に、リングがあるのも確認していた。妻子のある男の方が、こちらも気が楽でいい。
「ここを出ましょう、二人きりになれる場所でお話ししたいわ。いいでしょ?」
 男の喉元が動いたのを、私は見逃さなかった。ズボンに隠された股間が大きく膨らんでいればいいのにと、私はそんなことを思っていた。

 私が自分性癖に目覚めたのは半年前だ。
 出かける用事があり、久しぶりに乗った満員電車の中で、それは起こった。
 ぎゅうぎゅう詰めの車内で尻に当たっている物を、私は最初、誰かのカバンか何かだと思っていた。それが手だとは分かったが、その時はまだ、痴漢だとは思いも寄らなかった。これだけ混んでいる車内なのだから、と。
 それが偶然でも、混雑した車内で身動きが取れないためでもないと確信したのは、尻に押し当てられていた拳が開き、私の尻にピッタリと手の平を添え、撫で回し始めてからだ。
 ムンムンとした熱気の篭もる車内で、サーと血の気が引き、背筋が冷たくなるのを感じた。
 痴漢なんて、十年以上ぶりだった。若い頃は平気で、
「やめてください」
 と声をあげられたものだが、年を取って図々しくなったはずの今、私にはそれがどうしても出来なかった。
 こんな年になって恥ずかしいという思いがひとつ。それに、見回したところ、車内には女子高生や女子大生と思える若い女性が沢山いたのだ。
 そんな中で三十路の私が声をあげたとして、信じて貰えるものだろうか?
「あのおばさん、自意識過剰なんじゃないの?」
 そう思われるのではないかという危惧があった。
 何も出来ずにいる間にも、尻を蠢く手は、どんどん大胆になっていった。遠慮がちにさすっていただけの手の指が開き、尻肉を鷲づかみにするようになっていく。
 やがて手はスカートを捲りあげ、ストッキングの上から尻の割れ目をさすり、大事な部分へと伸びた。
「あうっ!」
 思わず出した小さな声は、満員電車の喧噪にかき消された。
 指は私の脚の間に忍び入り、感じやすい部分を丹念に嬲っていく。
 ストッキングとショーツ越しではあったが、その感触は私を狂わせるのに充分だった。
 夫との夫婦生活は、月に一度あるかないかだった。こんなものかなと思っていたから自分ではそれほど欲求不満だとは考えていなかったが、身体は痴漢の与える快感に、過剰なほどに反応した。
 それに……これはあとで冷静になったときに思ったことだったが、私は夫から性生活を求められないことで、自分の中のオンナの部分は、もうお役後免になったものだと、勝手に思いこんでいた。
 三〇歳を超えた時に、もう若くない、女性として若さという価値を失ってしまったのだと、ぼんやり考えていたこともあった。
 それなのにこの痴漢は、周りにいる若い女性ではなく、私をわざわざ選んで痴漢したのだ、という、妙な優越感があった。選ばれて触られたのだということも、快感を倍増させていたのだろう。
 とにかく私は、痴漢の指戯に信じられないくらい乱れてしまったのだ。
 恥ずかしいことに私は腰を突き出し、脚まで開いて痴漢の指を受け入れた。私が抵抗しないどころか協力的になっている事に気をよくしたのか、痴漢は私の背後にピッタリと密着した。荒い息づかいが、耳のすぐ横で聞こえた。
 もう片方の手が私の胸元を探り始めたときには、私はすっかり感じ入り、これ以上の快感を切ないほどに欲していた。
 次の駅で降りろという痴漢の指示に従い、私は言うとおりにした。
 痴漢はしっかり私の手を握り、駅の構内を抜け、まだ開店前だった駅ビルの地下駐車場へ下りた。
 痴漢も私も、その間一言も話さなかった。痴漢の顔を見て、私は彼が思ったより若く、普通のサラリーマンといった恰好をしていることに驚き、逆にドキドキもした。
 いかにも不真面目な人ではなく、本当に普通の人に、あんな大胆なことをされたんだという気持ちが、逆に刺激的だったのだ。

「へえ……」
 適当に入ったラブホテルの広いベッドの上で、香川は私の乳房を弄びながら遊びながら話を聞いていた。
 痴漢にされた話をしたときは、調子に乗って、
「こんな風にされたの? こう? いやらしいなぁ、思い出しただけでこんなにぐちょぐちょなのか」
 と、話の内容と同じように私の脚の間をまさぐったから、乱れてしまって、私は何度も話を中断せざる得なかった。
「で、駐車場へ行って、どうしたの? ホテルへ行ったの?」
「いいえ」
 固く凝った乳首を柔らかく弄られ、うっとりしながら、私は話を続けた。
「多目的トイレってあるでしょう、車いすとか、乳児連れなんかも利用できる広いトイレの個室。ほら、洗面台に手すりが付いてたりする……あそこへね、二人で入ったのよ」

 あんなことは初めてで、しかも思いがけないことだった。
 それまでセックスというのは、ベッドの上で全裸になってするものだと思い込んでいた私が、ストッキングとショーツを膝までおろし、スカートを腰まで捲りあげ、多目的トイレの手すりにしがみついて尻を上げ、バックから痴漢に犯されていたのだ。
 しかも、自分の意志で!
 あんな、挿入と射精だけが目的の、前戯も言葉の掛け合いもない、まるで獣の交尾のようなセックスは初めてだった。
激しい快楽だった。
 男は無言で私を貫き、突き刺し、肉を打ちつけるように強く腰を動かし続けた。
 私は必死で声を殺し、異常なまでの快感に耐え続けていた。何度昇りつめ、腰が砕け落ちそうになったか分からないほどだった。
 途中何度か、トイレの扉がノックされた。だが、私たちはやめなかったし、やめようとも思わなかった。
 むしろ、外には普通に人がいるのだという異質な状況下でひたすら肉欲に溺れていることすら、快感のスパイスになっていた。
 男は私に挿入したままで2回射精し、少し休んで更にもう1回射精した。
 快楽に耐え続けるのは、地獄のような苦しみにも似ていた。けれど身体がその苦しみを求めてやまず、私はいつまでも尻を突き出し続けていた。
 あの日私は、開花したのだ。
 狂おしいほどに身体が快感を求めて火照り、疼くようになってしまった。セックス依存症というものがあると聞いた。もしかしたら私は、あの異常な体験からそれに目覚めてしまったのかもしれなかった。
 その痴漢とは、その後も連絡を取り合い、会ってはひたすらに肉を貪りあっている。だが、せいぜい月に2,3回しか会えない。
 毎日だってセックスをしていなければおかしくなってしまう私は、だから男を求めて、出会い系サイトに登録しまくっているのだ。

「そりゃすごい」
 香川は、私の話に興味をそそられたようだった。
 いつの間にか、私を嬲っていた手は止まっていて、真剣に私の話を聞いているようだった。
 私はそっと、男の股間に手を伸ばした。少し前まではビンビンに固くなっていたが、今は少し収まっている。
「ちょっと、ひいちゃった?」
「いや、ますますマキコさんに、興味が湧いてきたよ。普通の、上品な奥さんに見える君がそんな性癖を持ってるなんて、ビックリだし、結構興奮する」
 本当? じゃあどうしてチンポが小さくなってるのかと、私は笑って聞いた。
「その痴漢にちょっと嫉妬したんだよ。君をそんなにも乱れさせた痴漢にね」
 香川はすっくと立ちあがり、いきなり服を着始めた。
「やめちゃうの? そんな……」
「いや、やめないよ。場所を変えるだけだ。君も着替えて、ついておいで。ああ、スカートだけでいい。下着やストッキングはいらないよ」
 私は呆然となりながら、着替える香川の背中を見つめた。

「ああっ!ん、んん……」
「声をあげるんじゃないっ!」
 最初はひんやりとしていた階段の手すりは、私の体温で驚くほどに熱くなっていた。汗で滑って何度も滑りそうになる。
「んくぅぅ……うう、ううう」
 ラブホテルの屋外非常階段で、私は香川に後ろから犯されていた。
 真っ昼間だ。周りはラブホテルだらけで人気はないが、それでもいつ、誰が私たちに気付くかもしれない。
「日差しの下でのセックスってのも、なかなか興奮するものだな」
 香川はそう言いながら、私の背後でピストンを繰り返す。
「ああっ!」
 香川の手が、私のブラウスの前ボタンを開けた。ずらされたブラジャーから乳房がこぼれ落ち、陽の光を浴びる。
「アアアア……」
 誰かに見られたらどうするの――。羞恥心が異常な興奮を誘い、私を狂わせた。
「すごい感じてるみたいだね、エッチな汁がものすごいよ……それに気付いてる? マキコさん、自分から俺にガンガン尻を打ちつけてきてるんだぜ?」
 気付いていた。恥ずかしいけど、もう止まらなかった。私は犬のように尻を振り、香川のペニスを身体の奥深くまで呑み込んでいた。
「あ、アアアっ!」
 鼓動が高鳴り、私は真っ昼間の非常快感で、新たな快感に目覚めた。
「廃校?」
「あれ、夏樹ったら知らなかったの」
「だって私……」
「ああそうか。あのね、去年廃校になったのよ。ほら、川向こうにも小学校あるでしょ、あそこと統合したの」
「じゃあ、校舎どうなってるのよ?」 
「来年ね、町の施設が入るんだって。今は普通に、立ち入り禁止」
 けっこうな量のアルコールが入っているのだろう。鼻の頭まで真っ赤に染めた由美はくすくす笑った。
「だからね、忍び込もうって言っても、肝試しのノリよ。泥棒に間違えられたりなんて、そんなことはないわけ」
「だったらいいけど……」
 他のみんなもどうやらノリノリだ。みんな廃校になったあとの校舎が気になっていたらしい。
「行こう、行こう」
 酒の勢いもあり、大盛りあがりの様子。すでに男子の一部は、
「男女ペアで、5分おきに出発な。俺、くじ作るわ」
「ルート決めよう。2階の一番端って、音楽室だっけ? 理科室だっけ?」
「俺、転校生だったから覚えてねーよ」
 なんて、どっからか紙を引っ張り出してなにやら書いていた。

 私は中学に入ってすぐ、生まれて小学生時代までを過ごしたこの田舎町から引っ越していた。
 大学のレポートでこの懐かしい町の伝統工芸について書くことに決めた私は、久しぶりにこの地を訪れたのだ。
 小学校時代仲のよかった由美の実家が民宿をやっていたのを思いだし、そこを予約したところ、由美が
『夏樹が帰ってくるってみんなに話したら、都合の付く連中で同窓会やろうって話になったのよ』
 と、計画してくれたのだ。
 こっちは遊びで帰ってきたわけではないのに……とは思ったが、その心遣いは嬉しかったし、そういうのも楽しいかなと、私は了解したのだった。
 土地に残っていた十数人の同窓生たちはちょくちょく会っていたようで、皆、仲がよかった。
 驚いたことに、結婚している同窓生も二組いた。子どもまでいるそうだ。若い人の少ない過疎の町だからかもしれない。
 同窓生の中には、私がレポートにまとめようと思っていた伝統工芸を家業にしている男子もいたし、飲み会の席でその話も聞いてみようと思っていたが、実際飲み会の席は、それどころではなかった。
 皆、煽るように酒を飲み、へべれけだ。
「娯楽の少ない町だからね。こんな時に飲んで騒ぐくらいしかないのよ」
 由美は笑って言った。
 そして、廃校になった母校の校舎に忍び込もうという話になったのだ。

 秋の夜風はアルコールで火照った身体をほどよく冷やしてくれる。
 元々住んでいた家の近くの飲み屋から校舎までの道を歩きながら、ああ、私は小学校時代、こんなにも遠くまで歩いて学校に通っていたのだなぁと改めて思い出される。
 もう、子どもはほとんどいないときいていた。今まで廃校にならなかったことがむしろ不思議だとも。
 思い出の中の校舎は大きかったけれど、大人になった今見てみると、とても小さい。私たちは低い校門を乗り越え、中へと進入する。メイン校舎と、裏にプールを備えた体育館があるだけのこぢんまりとした小学校だ。それでも星空の下、私にはその思い出の詰まった校舎は輝いて見えた。
 感傷に浸っている間に、くじで決まった男女ペアが、次々と懐中電灯を片手に校舎に忍び込んでいった。
 入り口の鍵は外されていて、出入りが自由になっているのには驚いた。物騒な、とも思うけれど、若い人の少ないこの町では、わざわざ廃校になった校舎に忍び込んで悪さをする人はいないのかもしれない。第一、盗むモノもないし。
「そろそろ俺たちの番だぜ、よろしく」
 私とペアになった吉本が肩を叩いてきた。私はこの吉本をよく覚えていた。割と仲が良く、しょっちゅう一緒に遊んでいたっけ。身体が小さく、どちらかといえば中性的な男の子だった吉本だったが、今はすっかり男らしくなっている。
 背も高く……なかなかいい男になっていたので、私はこの吉本とペアになったとき、ちょっとドキドキした。
 飲み会の席でも、
「おまえ、ほんっと、子どもの頃から変わってねぇなあ」
 なんてビール片手に私の背中をバンバン叩くなんて、他の奴がやったら激怒モノだけど、吉本だったからなんとなく許していた。
「ほら、前のペアから五分たったからもう行くぞ」
 吉本は、私を見てにんまり笑った。肝試し目的だから、ペアづつ時間差で校舎へ忍び込むことになっていたのだ。
 既に半分以上の同窓生が忍び込んでいるはずの校舎を見上げた。
 廊下のあたりに、いくつか懐中電灯の揺らめきが見えた。
「さ、行こう」
 懐中電灯に明かりをつけた吉本が、ごく自然に私の手を握りしめ、校内へと足を踏み入れた。

 夜の校内は、不気味だ。
 しかも、廃校になった古い校舎だ。中途半端に残された、壊れた机やら椅子やら、そんな備品が雑然とおいてある様はそこはかとなく気味が悪い。
 時折、ガタン、ゴトゴトゴト、という物音が聞こえた。先に入った同窓生の出した物音だろうと分かっていても、怖い。
 私は思わず、吉本の腕にしがみついていた。
「怖いのか? 相変わらず臆病だな」
「なによ、小学生の頃は、あなただって臆病だったじゃない」
「アハハ、まあ確かにそうだったかも」
 案外素直なところは変わっていないようで、私はちょっと嬉しくなる。
「うわぁあっ!」
 突然、吉本が素っ頓狂な声をあげて懐中電灯を振りあげた。
「ちょっと、やだ、なに、なによ」
「そこに、なんか目が……」
 懐中電灯を受け取り、吉本が指さす場所を照らす。なんだ、理科室にあった解剖模型だ。
 いたところは普通の教室だったが、誰かが理科室から持ってきて放置していたのだろう。確かに、雑然とした普通の教室で、しかも深夜に見るとゾッとする。だが、落ち着けばそんなに恐ろしいものではない。
「そんなに怖がることないわよ」
「夏樹、度胸あるなぁ……」
 吉本は私の腕にしがみついたままだ。こんな暗いところでくっついていると、なんとなく変な気分になる。アルコール混じりの吉本の匂いが鼻をつく。
 一瞬、私たちは互いに押し黙ってしまった。とくとくという心音が聞こえる気がした。
 その静寂を、女性の悲鳴のようなものがやぶった。
「やだ、なんの声?」
 良く聞くと、悲鳴ではないようだ。なんというか、すすり泣きのような……。
「ありゃあ、春子だな」
 そんなことを、吉本が言う。
「春子? 春子ちゃんがなんで」
「近くだな、見てくれば? 別に見てもいいと思うぜ」
 なんとなく、意地悪そうな声で吉本が言った。
 一体なにがあったというのだろう? 私は懐中電灯を抱えたまま声のする方へ歩いていった。声は、私たちがいた教室の隣の隣……もともと三年生が使っていた教室から漏れていた。
「春子……?」
 恐る恐る、教室内を懐中電灯で照らす。
「え……!」
 明かりの先に、絡み合う男女の姿があった。黒板に手を付き、バックから犯されている春子の姿。私は凍り付き、慌てて懐中電灯を下げた。
 一瞬、春子を犯している――あれは、川崎という同窓生だったか、彼が私の方を見て笑ったような気がした。
「……由美ちゃんからは、なにも聞いてなかったの?」
 いつの間にか、背後に吉本が立っていた。
「たまにさ、こうやって集まっては適当にペア作ってさ、ヤってるんだよ、俺たち。ここら辺娯楽もないしね」
「そんな、じゃあ……」
「肝試しなんて口実だよ。でも、強制じゃないぜ、イヤだったら普通に出よう。ヤらない奴もまあ、いるっちゃあいる」
 同窓生内に二組も子持ちの夫婦がいた理由が分かったような気がした。
「俺は、夏樹なら大歓迎だけどね」
 背後からそのまま抱きしめられ、首筋に熱い息を吹きかけられた。
「あ……」
 なんだか、一瞬頭の芯が痺れるような感覚が私を襲った。

 音楽室だった部屋に入った私達は、その場で互いを求め合った。私にとっては一夏のアバンチュール。吉本にとってはたまの娯楽なのだろうか。
 窓から差し込む月明かりの他に、私たちを照らすものはなかった。注意して耳を澄ますと、なるほど、校舎内のあちらこちらから、甘い声が聞こえていた。
 小学校時代を過ごした校舎で、ともに笑いあった仲間達がこんな風なことをしているのだと思うと、何とも言えない甘酸っぱい感傷が私を包む。
「あああ……」
 服を乱れさせた私は、埃の積もるタイル敷きの床に直接背中をつけていた。私の上にはブリーフ一枚の吉本が重なり、はだけた乳房に舌を這わす。
「んん、んんん……」
 上手い。絶妙な舌遣いだった。
 私のあまり大きくない乳房を手で中央に寄せるように盛りあげ、胸の中央で距離を縮めた両乳首を交互に……時には大きな口を目一杯に使ってその両方を吸いあげる。
「んくぅ、んああああ……」
 乳首は私の一番感じる場所だ。脚をバタつかせ、私はその快感に悶えた。
 同窓生達が同じ校舎内にいると分かっていたから、最初は必死で声を殺していたが、次第に耐えられなくなり、私はため息と共に淫らな声をあげていた。
 吉本はその様子がおかしかったらしく、ますます執拗に乳首を責め立てる。
「ンくぅ、アア、もう、もうダメよぉ」
 情けない声をあげる自分が恥ずかしかった。それと同時に、こんな風にセックスをみんなで楽しんでいるのかと思うと、嫉妬心も沸いた。引っ越さなければ、私もその一員だったかもしれない。
「ねえ、あそこもう濡れちゃってるよ」
 普段だったら絶対言えないような大胆なセリフも自然と口をついて出る。完全に遊びだと分かっているセックスだからなのかもしれない。
「俺もさっきから、すごいぜ?」
 私の上にのしかかったまま、吉本は股間を私の太腿あたりにグイグイ押しつけてきた。熱くて固い肉塊が私の太腿でゴロゴロする。
「すごい……」
 私は手を伸ばすと、吉本は私がそれを握りやすいようにと、ほんの少し腰を持ちあげた。ブリーフの上から触れたそれは本当に大きくて……熱く固く存在感があった。
「直に触っていい?」
「しゃぶったっていいぞ」
 ブリーフの中に手を入れて強く握りしめると、吉本はううっと短く呻いて、顔をゆがめた。
「痛い?」
「痛くはないけど、ガマンが限界だ」
「私もよ」
 なんだか懐かしいような笑顔で吉本が、私の頬に軽く唇を添えた。

「んああ、ああ、ああああっ!」
「お前、声でかすぎだぞ? さっき、他の奴等が見に来たの気づいてるのか?」
「いいわよ、お互い様なんでしょ……アア、あああっっ……!」」
 とても大胆な気分になっている自分がおかしい。
 スカートを捲りあげ、下着を膝までおろして四つんばいになった私はバックスタイルで全裸の吉本に犯されていた。
 吉本は私の腰を支え、ガンガン責め立ててくるかと思うと、時折ゆっくり、じっとりねっとりと出し入れしたりと、緩急をつけて私を煽りたてる。
 イキそうになったり、焦らされたり……そのリズムが絶妙で、私は絶頂一歩手前の状態をずっと続けさせられていた。
 もう一歩刺激があればすぐにでもイッちゃう、けれどまだイケない……焦れったいようなその感覚が気持ち良くて良くて、私ははしたない声で淫らに喘ぎ続けていた。
 ああ、でも、もうもう……!
「イ、イカせてぇ、もう限界よぉ」
「俺もだよ、ちくしょう」
 ハアハアと荒い息を吐きながら、吉本が今までにないくらい激しく、強く私を貫きだした。
「ああ、おおおおう、ンクゥ、ンアアアアアアアアアアアっ!」
 子宮の入り口まで届くくらい深く、強く、私の粘膜を吉本の肉棒が掻き乱す。
「あああ、ダメ、だめぇぇぇ」
「俺も……うううう」
「んんんんんアァァァアアアアッッ!」
 気が遠くなるという感覚を、私は初めて体験した。ほとばしる熱いザーメンを浴び続ける尻だけを高々と上げ、私は床に突っ伏した。
「夏樹、相手の交換しない?」
 いつの間にか由美が横にいて、私を懐中電灯で照らしていた。 
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